今回はトマトの肥料不足の状態についてご説明します。
私はビニールハウスの中で中玉トマトを栽培しています。
今回はこちらの肥料切れしたトマトを使って、肥料切れとはどういうことなのかを別のトマトと比較しながら説明をします。
それからこのトマトを使って肥料切れの状態からどのように回復させたらいいのかも説明します。
今回紹介した内容で他のミニトマトや大玉トマトも同じように対処することができます。
- トマトが元気かどうかわからない
- 追肥をどのくらいしたら良いのか知りたい!
- トマトの葉っぱは元気だけど、実が少ないのはなぜ?
という方におすすめの記事です。
トマトの肥料不足にとは
こちらのトマトは袋栽培を行っています。
この袋の中に培養土が入っていて、そこでトマトを栽培しています。
それぞれの栽培袋にはドリップボタンというものが取り付けられていて、自動で水やりが行われています。
こちらのトマトは植え付けてから1ヶ月半ほど、追肥を全く与えませんでした。(元肥は少し使用)
なぜかというと新型コロナウイルスの影響でこちらのハウスに来れなかったからです。
そのせいで肥料不足の状態に陥っています。
野菜を栽培する際は追肥が重要
トマトに限らず色々な野菜は、途中で追肥をやらないと肥料切れになることがあります。
肥料切れになると収穫量が落ちたり、味が落ちたり、そもそも収穫できないことにもなります。
なので十分注意してください。
畑で栽培しているトマト
まず、畑で育てている肥料切れしていないトマトをご紹介します。
畑で育てているトマトは肥料切れを起こしていないので、ハウスのトマトと生育を比べてみます。
畑で育てているトマトの様子
では、トマトの状態を見てみましょう。
- 畑のトマトの葉はサイズが結構大きい
- 緑の色が青々としていて非常に濃い緑色をしている
- 葉が反り返る様子もなく、平に綺麗に広がっている
- 葉も分厚い
状態は良さそうです。
新葉の部分も見てください。
- 新葉の部分も非常に綺麗
- 新葉の部分の綠色も濃く、葉が内側に曲がったり上に反ったりしていない
- 大きく広がった葉も非常に綺麗
- 横のサイズも非常に大きい
-
下の葉の方がより大きく立派に大きく広がっている
非常に良い状態だと思います。
こちらの株は、もう大きな大玉トマトが何個もなってます。
次の株もミニトマトがなっており、次の花房も順調です。
時々、花房の先端(実がなっているところの先端)からわき芽のような成長点が発生します。
特に肥料分が多く草勢が強いと発生しやすくなります。
これもひとつ指標になるかもしれません。
この株も大きく育っています。
茎の太さが非常に太く、葉もかなり大きく育っています。
畑で育てているトマトの状態はこんな感じです。
ビニールハウスで栽培しているトマト
先ほど紹介した畑で育てているトマトとビニールハウスで育てているトマトを比較してみましょう。
では、ビニールハウスの中で育てている肥料切れの状態のトマトをご紹介します。
ビニールハウスで育てているトマトの様子
まず成長点付近を見てみてください。
- 葉の色がかなり薄い緑色
- 株全体の葉の大きさがかなり小さい
- 背丈はなかなか高いが、葉が小さいので横の広がりがない
葉が上に反り返っているのがわかるでしょうか?
船のような形状ともいわれています。
肥料切れのひとつの特徴です。
株全体を見てみると葉の大きさがかなり小さいです。
それから背丈はなかなか高いですが、葉が小さいので横の広がりがないように見えます。
こちらの株の葉の大きさを見ると、下の部分は葉が小さいです。
真ん中は少し葉が大きくなります。
これは植える時に使った元肥の影響で真ん中の葉は少し大きくなりました。
しかし元肥の効果が切れたことで、その後の葉はまた小さくなってしまったようです。
この葉もかなり色が薄く小さくなっていて、葉が上に反り返るような形をしています。
トマトの栄養診断
次にトマトの栄養診断をします。
栄養診断というのはトマトのある数値を測定することで、肥料分が足りているのか足りていないのかを判断する方法です。
こちらの動画でも紹介しています。
トマトの栄養診断のやり方
今回はこちらのトマトを使って、栄養診断のやり方を説明します。
やり方は一番先端部分にある成長点から15cm下の茎の直径を測ります。
その茎の直径が1~1.2cmだと栄養状態は良いということになります。
逆に1cmよりも小さい場合は、栄養不足・肥料不足ということになります。
逆に1.2cmよりも太い場合は、肥料が多すぎる肥料過多です。
一番上の成長点から15cm下の茎の太さを測定します。
測定にはメジャーを使います。
100円ショップなどで売っているもので十分です。
トマトの株を実際に測ってみる
では、一株ずつ測ります。
成長点とは、茎の一番高い位置にある芽の部分です。
まずはそこから15cm下のポイントを見つけましょう。
この株の場合、15cm下はこのポイントでした。
このポイントの茎の直径を図ります。
正確に計りたい場合にはノギスを使った方がいいですが、今回はメジャーを使って簡易的に測定します。
こちらの直径はおよそ0.4cmでした。
他の株も同じように測定します。
どの株も成長点から15cm下の茎の直径が1~1.2cmの間にはなっていませんでした。
なので、これらの株は栄養不足・肥料不足の状態であると考えられます。
トマトの栄養成長と生殖成長のバランスを見る
次は栄養成長と生殖成長のバランスを見る方法をご紹介します。
栄養成長と生殖成長について
まずは栄養成長と生殖成長という言葉を簡単にご説明します。
栄養成長は葉や茎が成長することです。
生殖成長は花や実が成長することです。
トマトは葉を作りながら、花を作って実を収穫します。
実を収穫しながら、また新しい葉をつくって実を収穫してという風に成長します。
このように葉の成長と花や実の成長、この両方のバランスを取ることが非常に大切です。
葉ばかり成長してしまうと実が収穫できなくなります。
逆に実ばかり収穫してしまうと、今度は葉の生育が衰えてて味が悪くなったり、その後急に収穫できなくなったりします。
なので、栄養成長と生殖成長のバランスが非常に大切です。
栄養成長と生殖成長のバランスを見てみよう
今回は栄養成長と生殖成長のバランスを簡単に見る方法をご紹介します。
第一花開花時の花房の付け根が、成長点から何cmの位置にあるかを測る方法です。
栄養成長と生殖生長がちょうどよいバランスの時、最初の花が咲いた花房の付け根と成長点までの距離は約10~15cmです。
成長点から10cm以内の花房の中で一番最初の花が咲いた場合は、成長バランスが生殖成長に傾いていると考えられます。
逆に、第一花開花時の花房と成長点の距離が15cm以上だった場合、栄養成長に傾いていると考えられます。
実際に測ってみる
実際の株を使って栄養成長と生殖成長のバランスを見てみましょう。
こちらの株は一番上に新しい花房が出ていますが、蕾の状態でまだ花が咲いていません。
なので、この位置は測定せず、その下にできている新しい花房で測定します。
この花房には花が2つ咲いています。
本来は1番目の花が咲いた時に測定したかったのですが、今回は2番目の花が咲いた状態で測定します。
メジャーを使って測ります。
一番先端部分にある成長点から、花が咲いた花房の付け根までの距離を測定します。
この株は8.5cmでした。
次の株も一番上の花房に新しい蕾が発生していますが、まだ花が一つも咲いていないのでその位置では測定しません。
その次の花房を見ると、花が1つだけ咲いています。
なのでこの花房の付け根から成長点までの距離を測定します。
成長点から一番最初の花が咲いた花房の付け根までの距離が4.5cmでした。
他の株も測定します。
というわけで、3つの花が咲いてしまった株を抜かすと、どの株もその花房の第一花が咲いた時の花房の位置は成長点から10cm以内でした。
なのでこちらの株は、栄養成長と生殖成長のバランスが良い状態ではありません。
生殖成長に傾いてしまっている状態だと考えられます。
成長バランスが悪くなる原因
成長バランスは、肥料が多い時に栄養成長が強くなりやりやすいです。
また、肥料切れを起こした時は生殖生長が強くなりやすいです。
まとめると、こちらの株の栄養状態は肥料不足の状態で、成長バランスは生殖成長の方が勝っている状態だとわかりました。
診断結果から改善策を考える
それではこちらの株の栄養状態の改善として追肥を行います。
今回は追肥としてIB肥料を使います。
ただし、他の化成肥料でも有機肥料でも構いません。
お使いの肥料の窒素リン酸カリの割合や、微量要素が入っているのかを確認して下さい。
トマトの味を美味しくしたい場合には、有機肥料や微量要素入りの化成肥料がおすすめです。
これは肥料の割合がN10:P10:K10:Mg1の割合で入っています。
窒素10%、リン酸10%、カリ10%、苦土1%という割合です。
今回は一株当たり窒素を1g分を与えたいので、一株あたり10gの肥料を使います。
10gの肥料のうち10%が窒素なので10g×0.1(10%)=1gになります。
また肥料分が多い肥料をまとめて株元に施用すると、一気に肥料分が溶け出して根に障害を与える可能性があります。
なので強い肥料を与える時は株元から少し離した位置に何箇所かに分けて入れるようにしてください。
実際に追肥をする
今、株元にドリップを設置していますが、今回は追肥のために株元から少し離れた場所にもドリップをつけます。
2株植わっている袋に3ヶ所の穴を開けたので、合計5カ所に分散させて肥料を与えます。
2株なので2株合わせて20g 与えます。
5カ所穴があるので、1箇所に約4gです。
このIB肥料は1粒が約1gなので、一箇所に4粒ずつ入れます。
本来このような袋栽培では液肥を使って栽培します。
固形肥料はあまり使わないのですが、今回のシステムでは液肥を使っていないので、穴を開けてやります。
本来はこのように穴を開けることはしません。
他の袋も同じように肥料を与えます。
ドリップから1日2回水が出てきます。
水が出てくる度に少しずつ肥料分が溶けて、根から植物に吸収されます。
中央の3つの肥料が速く溶けると思います。
両脇の肥料は横から少しずつ水が染みていくので、ゆっくり溶けていくはずです。
追肥をするタイミングや量
IB肥料は肥料の効く期間がおよそ1ヶ月といわれているので、このような追肥を1ヶ月おきにやっていきます。
その時に何も考えずに決まった量の追肥を行ってもいいですが、できれば栄養診断をして株の状態に合わせた肥料の量を与えるようにしてください。
例えば茎の太さが非常に太い場合は、追肥は必要ないかもしれません。
畑のトマトの栄養診断と成長バランスの測定
次にハウスのトマトと同じように、畑のトマトも測定します。
成長点から15cm下の茎の太さ、第一花が咲いた花房の成長点からの距離を測ります。
畑で育てているトマトの栄養診断
まずは茎の太さから測っていきます。
畑のトマトの茎の太さを調べると、約1~1.2cmの間ということが分かりました。
なので、栄養状態は非常に良いです。
畑で育てているトマトの成長バランス
次は栄養成長と生殖成長のバランスを見るために、第一花が咲いた花房と成長点の距離を測ってみます。
第一花が咲いた状態の花房がない株の測定はやめます。
第二花が咲き始めたぐらいの花房があるので測ります。
これらの株は第二花もしくは第三花が咲き始めた株です。
実際、第一花の時にはもう少し高い位置にあったと思います。
それでも、第一花の咲く位置は下の方だったかもしれません。
測定結果から成長バランスを考えると、少し栄養成長に傾いていると思います。
その原因の一つとして肥料分が多いというのがあげられます。
診断結果のまとめ
このようにビニールハウスの中のトマトと畑で育てているトマトでは非常に生育状態が違っています。
まず、畑のトマトは栄養状態は今良い状態で、やや栄養成長側に傾いています。
ビニールハウスのトマトは肥料不足の状態で、生殖生長に傾いています。
以上の結果になりました。
栄養診断と成長バランス測定!茎の太さと花の位置を測るだけのまとめ
今回はトマトの栄養診断と成長バランスを見る方法をご紹介しました。
栄養診断は、一番先端部分にある成長点から、15cm下の茎の直径を測ります。
茎の太さで栄養状態を確認してください。
成長バランスは、第一花開花時の花房の付け根が、成長点から何cmの位置にあるかを測ります。
花房の高さによって、栄養成長よりか生殖成長よりかがわかります。
トマトは沢山の肥料を消費する野菜ですので、栄養診断をしながらうまく追肥をしてください。
今回の内容は、こちらの動画で紹介しています。