いちごの炭疽病(炭そ病)の葉とランナーの症状と感染予防対策

炭疽病_アイキャッチ
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今回はイチゴの炭疽病についてご説明ます。

イチゴの炭疽病というのは、イチゴの病気の中でもかなり恐れられていて被害が多い非常に厄介な病気です。

家庭菜園でも発生しますし、商業的なイチゴ農園でも問題になっています。

なのでイチゴを育てている方は是非最後までご覧ください。

  • イチゴの葉っぱがおかしい!
  • 私の育てているイチゴは大丈夫?
  • 炭疽病になってしまったらどうしたらいい?

という方におすすめの記事です。

目次

炭疽病のイチゴの様子

では実際に炭疽病のイチゴを紹介しながら説明します。

ここに親株を植えてあります。

炭疽病_親株

そこから発生したランナーをポット受け育苗という方法使って苗を作っていました。

ポット受け育苗のやり方は、こちらの動画で詳しく説明しています。

ただ見ていただくとわかると思います。

枯れていない苗もありますが、この辺り大半が枯れていて葉っぱなどが異常をきたしています。

炭疽病_枯れた子苗

これはおそらく炭疽病の症状です。

炭疽病を見たことがない方や発生していても炭疽病かどうか分からない方もいらっしゃるんじゃないかなと思います。

なので、はじめに炭疽病の症状を説明します。

イチゴの炭疽病の症状①葉っぱに黒い斑点がある

葉っぱを見ていただくと黒い斑点が発生しているのがわかります。

炭疽病_葉っぱ

黒い斑点というか黒いシミのようなものが発生しています。

これが炭疽病の症状の1つです。

イチゴの葉っぱの黒い斑点は他の原因で起こる場合もある

ただ、こういう斑点が出たからといって、100%炭疽病というわけではありません。

なぜかというと、他の原因でも似たような症状が現れるからです。

例えば

  • 蛇の目病
  • 黒斑病
  • 農薬の薬害
  • ミツバチの糞

などの様々な現象で似たように見える場合があります。

なので葉っぱの上に黒い斑点のようなものがあるから、それが全て炭疽病というわけではありません。

正確に病気の原因を判断するにはPCR検査などが必要

正確に病気の原因を判断するためには、症状が出ている苗をPCR検査などにかけて本当に炭疽病の菌なのかを確認しなければいけません。

ただPCR検査などはなかなかすることができないので、ある程度予想して判断しないといけません。

イチゴの炭疽病の症状②ランナーに赤紫色のくぼみがある

それから炭疽病の症状の非常に特徴的なもののひとつがランナーに発生する症状です。

炭疽病_ランナー

このようにランナーに赤紫色のようなくぼみというか、傷というか凹みのようなものが現れます。

これも炭疽病の特徴の1つです。

イチゴのランナーは接触で黒くなる場合がある

ただ、これもランナーに黒や赤っぽい凹みがあるからといって、100%炭疽病というわけではありません。

なぜかというと炭疽病ではなくても、どこかに擦れたり折れたり、何かとぶつかったり接触で黒っぽくも赤っぽくなることもあるからです。

このランナーの黒い部分見てください。

炭疽病_炭疽病に見えるが違うランナー

これを見ると炭疽病だと思うかもしれませんが、おそらくこれは炭疽病ではありません。

なぜかというと、このランナーの黒い部分は木の棒と擦れている部分だからです。

木の棒と擦れた部分が黒く変色しているだけです。

このランナーの他の部分は健康的で、一切黒くなっている部分がありません。

なので、ランナーが黒くなっているからといって炭疽病とは断言できないので注意してください。

症状が出ているイチゴの苗とその周辺

ランナーでつながっているこちらの苗も見てみましょう。

炭疽病_繋がっている苗

こちらの苗も同じような症状が出ています。

葉っぱの上に黒い斑点があって、葉柄と呼ばれている葉っぱの茎のような部分も黒っぽくなっています。

黒っぽい部分から黄色の粉のようなもの(粘着物)も出ています。

黒い斑点が出ている苗の他にも、似たような症状がこの辺り全体に見て取れます。

炭疽病_紹介した苗とその周囲

黒い点が出ていたり、ランナーに傷ができていたりします。

炭疽病_症状1

この苗も非常にわかりやすいです。

炭疽病_症状3

このランナーもそうです。

炭疽病_症状2

下の画像の黒い点は、炭疽というよりは蛇の目病かなと思います。

炭疽病_蛇の目病

この苗も黒い点が出ていて、ランナーには傷ができています。

炭疽病_黒い点とランナー

子株が炭疽病になってしまった親株の様子

では次に症状が出ている苗の親株を見てみましょう。

この株からランナーが出ています。

炭疽病_親株

この株を見てみるとわかるでしょうか?

炭疽病_親株2

親株にも同じような症状が出ています。

葉っぱに黒い斑点が出ています。

この葉っぱもかなり炭疽病っぽい症状です。

炭疽病_親株3

炭疽病かどうか確実に同定するのは難しいですが、これだけ特徴的な症状が出ているのでこの株は炭疽病と推測します。

そして、その株から取れた苗やその周辺の苗もすべて炭疽病に感染していると言ってしまっていいんじゃないでしょうか。

もちろん中には「これは炭疽病ではない」と考える方もいらっしゃると思いますが、私としては炭疽病と推測します。

イチゴの炭疽病を詳しく説明

ここから炭疽病について詳しく説明します。

まず炭疽病の問題点です。

炭疽病の問題点①かかると枯れてしまう

炭疽病にかかると枯れてしまいます。

枯れてしまう、もしくは非常に生育が悪くなります。

なので、収穫量が減ってしまうのが一番の問題です。

これは家庭菜園でも商業的な農園でもどちらにとっても非常に大きな問題です。

炭疽病の問題点②どんどん広がる

もう一つ厄介な点が、炭疽病はどんどん広がっていきます。

どうのように広がるかというと、まずランナーを介して苗に伝わります。

今回発生した炭疽病も親株が炭疽病に感染していて、その菌がランナーを伝わって子株に感染したと考えられます。

炭疽病の問題点③水を介して感染する

それから感染ルートはもう1つあります。

水を使った感染です。

炭疽病の菌は水を伝わって他の場所に移動できます。

例えばある株で炭疽病が発病したとすると、水を介して別の株に伝わってしまいます。

どうやって水を介して伝わるのかというと、水やりの時に発生します。

  • 上からじょうろやホースで水をかける
  • 上から自動潅水の散水チューブやノズルを使って水をかける

という方法で水やりをした場合、かかった水の水滴が隣の株に移ります。

すると、水しぶきによって炭疽病の感染が広がってしまうので、非常に厄介な病気です。

実際にホースノズルを使って水やりをやってみます。

どんな風に水しぶきが飛んでるのか確認してください。

炭疽病_水やり

株にかかった水はどうしても周りに飛び散ってしまいます。

そうすると飛び散ったところが感染して、そこからまた周りに感染して、そこからまた周りに感染をしてという風にどんどん感染が広がっていきます。

これが炭疽病の非常に恐ろしいところです。

炭疽病の問題点④高温の時期に発生する

炭疽病は高温の時期に発病しやすい特徴があります。

なので真冬の時期に炭疽病で困ることはほとんどありません。

発病するとしたら夏の時期です。

日本では春にイチゴの親株を植えて夏に苗を作ります。

そこで作った苗を秋に植えるというのが、家庭菜園でも商業的な農園でも一般的なやり方です。

イチゴの苗作りは気温が高い夏に行うので、炭疽病が非常に発生しやすく増えやすい時期と重なってしまいます。

夏に苗を作る場合、炭疽病が発生してしまってほとんどの苗が枯れるという問題が起きています。

これは数十年前から日本中で問題でしたが、近年は特に発生が多く非常に問題になりました。

なぜかというと、ここ数年の夏の気温が非常に高いからです。

暑ければ暑いほど炭疽病は増えやすくなります。

イチゴの炭疽病対策

過去に炭疽病で大きな失敗をしたことがある農園は、炭疽病が含まれていない親株を育てたり炭疽病が出ないような処理や工夫をたくさん行っています。

しかし、過去に炭疽病で悩んだことがない農園はあまり炭疽病対策をしないので、どかっとたくさんの炭疽病の問題が発生してしまいます。

ここではイチゴの炭疽病対策についてご説明します。

炭疽病が含まれていない親株を使う

親株自体に炭疽病が入っていたら、その後どれだけ予防をしても炭疽病が出てしまいます。

なので親株に炭疽病が入っていない株を使うのも非常に重要です。

これはなかなか判断が難しいです。

普通の株は炭疽病にかかっている可能性がゼロとは言い切れません。

可能性としてはどんな株も炭疽病に感染している可能性があります。

「感染している」のと「発病する」のは違うので、発病していなかったとしても菌を保有している可能性があります。

では、どういう株が安全なのかというと、今間違いなく安全なのはウイルスフリー苗です。

イチゴのウイルスフリー苗

ウイルスフリー苗は茎頂培養という処理を行うことによって、炭疽病が確実に感染していないということが実証できている苗のことです。

茎頂培養についてはこちらの動画で詳しく説明しています。

過去に炭疽病で苦しめられた農園は、一定の割合でウイルスフリー苗を親株として使用して炭疽病を農園に持ち込まない工夫をしています。

ただ、炭疽病で苦しんだことがない農園は、ウイスフリー苗は値段が高いので購入しなかったり、知り合いの農家の方から貰ったイチゴの苗を普通に育ててしまったりましす。

誰かから貰った苗は炭疽病の菌を持っている可能性が高いです。

なので人から譲り受けた苗から炭疽病が広がってしまうこともあります。

もしくは苗屋さんやホームセンターなど商業的にイチゴの苗を販売しているところでも、ウイルスフリー苗ではない苗を販売していたら、その株には炭疽病が感染している可能性があります。

なのでその株から炭疽病がどんどん広まってしまうこともあります。

私は色々なイチゴ農園の方と仕事をしています。

苗屋さんから購入した苗が炭疽病に感染していて、そこから作った苗も炭疽病で全滅してしまうということが今まで何度かありました。

上から水をかけない

次の対策は水のやり方です。

炭疽病は水でどんどん広がっていくので上から水をかけないのが一つ鉄則です。

その代わりに点滴チューブを使ってできるだけ水滴が跳ねないようにします。

もしくは底面給水を使う場合もあります。

カタツムリポットを使うのもおすすめです。

農薬でイチゴの炭疽病対策

それから農薬を使うことも重要です。

炭疽病に効果がある殺菌剤が売っています。

炭疽病の菌があった場合、炭疽病菌を殺してくれるというものです。

それから炭疽病に限らず、病原菌は植物に傷があるとそこから入りやすくなります。

なので葉欠きをした後に農薬を散布したり、気温や湿度が高い時には葉欠きを行わないようにします。

露地栽培のイチゴの場合、雨の水しぶきによる感染は防ぎきれない

炭疽病は水しぶきで感染します。

なのでビニールハウスを使っていない家庭菜園では特に発生します。

これはある程度仕方がないことです。

商業的な農園ではビニールハウスを使うので、点滴チューブを使ったり底面給水をすればある程度水しぶきは抑えられます。

ただビニールハウスで栽培をせずに露地で栽培をしている場合、雨が降ってしまったら水しぶきを抑えられません。

なのでそこはある程度諦めるしかないです。

ビニールマルチを張っていれば、泥の跳ね返りは抑えられます。

しかし、上からかかってきた水しぶきというのは抑えられないのでその点は仕方がないです。

イチゴの炭疽病は品種によってかかりやすさが違う

炭疽病は品種によってかかりやすさが違います。

非常に炭疽病にかかりやすい品種もあれば、ある程度かかりにくい品種もあります。

ただ絶対に炭疽病にかからない品種はおそらくまだありません。

どんなイチゴを育てている方でも炭疽病に対しては注意しないといけません。

いちごの炭疽病の葉とランナーの症状と感染予防対策まとめ

今回はイチゴの炭疽病についてご説明しました。

炭疽病は非常に厄介で日本中で問題になっている病気です。

家庭菜園でも発生しますし、商業的な農園でも発生します。

  • ウイルスフリー苗を使う
  • 水しぶきが飛ばない水やりをする
  • 殺菌剤を使う

このような方法で炭疽病を抑えてください。

それから他にもイチゴの病気やウイルスフリー苗について紹介しています。

是非そちらの動画もご覧ください。

今回の記事はこちらの動画で詳しく説明しています。

編集長がイチゴの本を出版します

編集長が家庭菜園の入門本を出版しました

動画でもっと詳しく見れます

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