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イチゴの病気と害虫対策を紹介〜農薬以外のアザミウマ防除方法とモスバリアの実験結果〜

今回は、イチゴの病気と害虫対策について紹介します。

  • イチゴを育てていてアザミウマに悩まされている方
  • 農薬以外の方法でアザミウマの対策をしたい方
  • モスバリアって何?

このような疑問や要望がある方は、ぜひ最後までお読みください。

イチゴに被害を与える害虫の種類

イチゴに被害を与える害虫は主に以下の8種類が存在します。

これらの害虫は、寄生する場所や生息する場所がそれぞれ異なります。

主な生息場所は以下の通りです。

例えば、アザミウマだと花のめしべの中、ハダニだと古い葉っぱの裏側、ホコリダニだと新芽の中など、害虫の種類によってその生息場所は様々です。

イチゴの病気

次にイチゴの病気について紹介します。

イチゴが感染する病気は主に以下の8種類があります。

病気の一例として、下の写真は灰色カビ病に感染したイチゴの様子です。

実にカビが生えたように灰色に変色しているのがわかります。

症状がひどくなると、茎や葉も同じように変色してしまいます。

病害虫の防除方法

イチゴに被害を与える病気や害虫を防ぐ方法にもいろいろな方法があります。

その防除方法について、大きくは以下の通り6種類に分けられます。

さらにこの6種類の中にいろいろな対策が存在します。

病害虫の防除手順

イチゴが病害虫にやられてしまった場合、どのような手順で防除をすればよいのでしょうか?

まずはその防除の手順をしっかり考えることが大切になってきます。

その手順は以下の通りです。

項目ごとに詳しく見ていきましょう。

手順1:計画

計画の段階では、イチゴの販売方法やどういう栽培をしたいのか、どういう農薬であれば使用していいのかなどを考えます。

また、イチゴの品種によって病気が出やすいのか出にくいのかなどの特徴の違いもあるので、品種選びからしっかり考えるということも重要です。

手順2:予防

2番目は予防です。

病気や害虫の被害が出てから対策をするだけでなく、あらかじめ病気や害虫の被害が出る前から予防しておくことも大切です。

例えば、防虫ネットを張ったり、天敵製剤や微生物製剤の使用や、UVBやモスバリアなどの方法もこの予防に含まれます。

手順3:発見

病害虫の症状を発見することも非常に大切です。

毎日の観察はもちろん、粘着シートを張っておいて、害虫が発生した時にすぐに発見することもとても重要です。

手順4:診断

病気や害虫が発生した際に、その病気は一体何なのか?その害虫は一体何なのか?その種類を診断し、特定することが大切です。

この種類を特定することで、次にどのような対策をすればよいかが見えてきます。

手順5:対策

手順4で特定した病害虫の種類から、どのような対策を行うかを考えます。

例えば、農薬を散布したり、何かしらの別の方法を使ってその問題に対して対策を講じます。

病害虫の対策というと農薬を散布することを考えがちですが、実際には手順2の予防をしたり、手順4の診断をしたりと、その前段階での準備が必要になってきます。

アザミウマの対策

アザミウマが発生した時の対策としては、以下のような方法が考えられます。

例えば、耕種的防除であれば雑草をしっかり防いだり、物理的防除であれば防虫ネットや粘着シートを使用するなどの方法があります。

実際にどのような手順で対策をすればよいか見てみましょう。

1:使用する農薬を決める

まず、計画の段階でアザミウマ対策の農薬はどのようなものを使用するかを決め、その地域だったらどんな種類のアザミウマが多いのかを調べましょう。

例えば、すぐにアザミウマを殺すことができる農薬もありますし、脱皮阻害を呼ばれるすぐには死なないけれども、脱皮をできなくして殺すという種類の農薬もあります。

2:予防対策を行う

予防対策として、防草シートを敷いて雑草を防いだり、モスバリアを設置したり、青色の粘着シートを張ってアザミウマの発生をできるだけ早く発見できるようにしましょう。

また、実を収穫している時に、黄色く変色したアザミウマの被害がある実がないかをしっかり確認しておくことも大切です。

防虫ネットの選び方

防虫ネットは白色よりも赤色の方がおすすめです。

赤色のほうがアザミウマが入りにくくなると言われています。

網目の細さは、白色の場合は0.6mmくらい、赤色の場合は0.8mmくらいが良いと言われています。

網目が細かければ細かいほど虫が入りにくくなりますが、その代わり風が通りにくくなって、ハウスの中の温度が上がりやすいというデメリットもあります。

ちなみに防虫ネットを使用すれば、アザミウマが入りにくくは出来ますが、完全に防ぐことは出来ません。

防虫ネットを使用してアザミウマが入りにくくなったとしても、一旦中に入ってしまうと、中で行動したり繁殖をして数が増えてしまうということがあります。

天敵製剤について

アザミウマに効く天敵製剤には以下のように様々な種類があります。

ハダニ対策で使用されるミヤコカブリダニは、ハダニの卵、幼虫、成虫を食べてくれるので、ハダニ対策としてはかなりの効果が期待できます。

しかし、アザミウマに関しては、基本的にはアザミウマの一齢幼虫しか食べてくれず、成虫の数が減らないので、どうしても被害は出続けてしまいます。

そのため、ハダニ対策ほどの効果は期待できません。

ちなみに、天敵製剤を入れると、天敵製剤に影響がある農薬は使用できなくなる点には注意しましょう。

気門封鎖型の農薬も便利で使いやすい農薬ではありますが、アザミウマには効果はありません。

その他、化学合成成分の農薬もあります。

効果は強めですが、最近は化学農薬についてもアザミウマの抵抗性が出来てしまい、効きづらくなったと言われています。

アザミウマの種類

アザミウマの種類には以下のようなものがあります。

イチゴの花に寄生するアザミウマは、主にミカンキイロアザミウマとヒラズハナアザミウマの2種類です。

アザミウマの種類によっても、生態や農薬の効きやすさが違ってきます。

実際にアザミウマの発生が確認されたら、そのアザミウマがどういう種類なのかを判別しましょう。

それによって、これから使用する農薬の種類や対策を決めることができます。

例えば、イチゴの花にアザミウマが見つかったら、ミカンキイロアザミウマなのかヒラズハナアザミウマなのかを判別しましょう。

アザミウマはとても小さいので、スマホのカメラなどを使ってズームで撮影したり、小さな顕微鏡で見て判別するのがおすすめです。

この2種類のアザミウマについて、ざっくりと特徴を説明すると以下のようになります。

黄色っぽいのがミカンキイロアザミウマで、黒っぽいのがヒラズハナアザミウマになります。

アザミウマを捕まえる

今回、幸いハウス内にはアザミウマがいなかったので、ハウスの外で実際にアザミウマを捕まえてみました。

ジップロックを使って、ハウスの外に咲いていたタンポポの花に被せて揺すったり叩いたりして、アザミウマを捕まえます。

このように簡単にアザミウマを捕まえることが出来ました。

ジップロックに入れたまま観察することでじっくり観察できるので、アザミウマの種類の判別も容易になります。

モスバリアとは?

イチゴに出る害虫の中で、一番厄介な虫はアザミウマです。

その対策のために、今回モスバリアの実験をしているのでその様子を紹介します。

まず、モスバリアとは何かというと、下の写真にある赤い光が出るLEDのことを指します。

これを設置すると、ハウス内にアザミウマが入りにくくなったり、ハウス内でアザミウマが行動しにくくなったり、数が増えにくくなると言われています。

また、農林水産省の中の農林水産技術会議が選ぶ農業技術10大ニュースの2020年バージョンに選ばれるぐらい、最近注目されているものです。

モスバリアは設置も運用もとても簡単です。

タイマーで日の出の1時間前から日の入りの1時間後を設定して、後は電源を繋ぐだけです。

モスバリアの実験

2021年1月から3月までの3か月間、モスバリアがどれだけの効果を発揮するのかについての実験を行いました。

実験の内容としては、モスバリアの光がよく当たる場所と、あまり当たらない場所の2箇所に分けて、粘着シートを設置しどれだけ補虫できるかや、各箇所でのイチゴの株の背丈の計測やイチゴの実のアザミウマによる被害状況の確認などです。

その結果、3カ月の実験期間中にアザミウマは1匹も確認できませんでした。

当然、アザミウマの被害にあったイチゴもありませんでした。

また、モスバリアの光が当たるところと当たらないところの両方で、イチゴの株の生育にも特に変化はみられませんでした。

補足で条件を説明すると、前年の10月にイチゴの苗を植えてから、化学合成成分の殺虫剤や殺菌剤含めて農薬の使用はしておらず、アザミウマを駆除する農薬の使用は一切しておりません。

にも関わらずこれだけ完璧にアザミウマの被害を防げたことには、以下の3つの要因が考えられます。

  1. 0.4㎜のかなり網目の細かい防虫ネットを使用していたこと。
  2. ハダニ対策のためにミヤコカブリダニをハウス内に放したこと。
  3. モスバリアを設置したこと。

まず1については、通常使用する防虫ネットよりもかなり目が細かいため、アザミウマの外からの侵入を防いでくれたことが考えられます。

但し、0.4㎜の防虫ネットを使用するデメリットとして、風通しが悪くなるため、春や秋にハウス内の温度が上がりやすくなってしまうので、一概におすすめすることはできません。

次に2についてですが、前述の通りミヤコカブリダニはアザミウマの幼虫を食べてくれるため、それによって被害を防げたことが考えられます。

しかし、成虫が一匹も確認できていないことを考えると、防虫ネットなどでそもそも外からの侵入を防いでいた可能性が高いです。

3について、モスバリアの照射範囲は半径15mと言われています。

今回実験を行ったハウスは、全体がその照射範囲に収まっていたため、ハウス全体にモスバリアの効果があったことも要因の一つと考えられます。

このように様々な要因が重なり今回アザミウマの被害を防ぐことができたものの、今回の実験結果が、殺虫剤等を一切使用せずにアザミウマを防げることを証明するものではないことをあらかじめご了承ください。

モスバリアの注意点

モスバリアについては、過去の論文等の内容からもハウス栽培の野菜でかなりの効果が認められており、イチゴ栽培でも同じような効果が期待できます。

モスバリアを設置することで、具体的に何%アザミウマの被害を防げるかという数値化は出来ませんが、少なくともミカンキイロアザミウマに対して効果があることは実証されています。

イチゴに寄生するアザミウマは他にも何種類かありますが、ミカンキイロアザミウマ以外の種類にも効果があるのかはまだよくわかっていません。

モスバリアが農業技術10大ニュースに選ばれたのも2020年とまだまだ新しい技術のため、これからさらに研究が進んで、どういう使い方をするとどのような効果があるかなどこれから明らかになっていくこともたくさん出てくると思います。

モスバリアはあくまでもアザミウマに対しての予防効果が目的の装置です。

これを設置したからといって、アザミウマが駆除できるわけではありません。

そのため、モスバリアを設置してから農薬の使用回数を徐々に減らしていくことを目標にしてください。

モスバリアを点灯するのは、日の出の1時間前から日の入りの1時間後までとしてください。

間違えて夜の間にモスバリアを点灯してしまうと、逆にアザミウマを集めてしまうことになりますので注意してください。

また、モスバリアの推奨の使い方として、それ単独で使用するのではなく、防草シートを敷いたり、防虫ネットを張ったり、青色の粘着シートを張ったり、微生物製剤や天敵製剤や農薬などと組み合わせて使用するのがおすすめです。

モスバリアの費用対効果について

モスバリアの価格についてですが、一例として「モスバリア ジュニアⅡ レッド」を購入する場合、1個あたり8万円くらいになります。

照射範囲は半径15mとされていますので、15m×15m×3.14=706.5㎡を1個でカバーできる計算になります。

そのため10aあたり2灯あれば、大体全域をカバーできるということになります。

但し、実際にはハウスの間口や形状によって設置の台数が変わってきます。

今回の例で挙げた、10aあたり2灯のモスバリアを設置した場合の費用は、大体16万円くらいになります。

耐用年数を約10年と考えると、1年あたり1.6万円くらいの費用負担となります。

次に電気代を計算してみます。

電気代については、下の内容で計算しました。

この場合、年間約1,600円ぐらいの計算になります。

1年あたりのコストを計算すると、本体価格は約1.6万円、電気代が約1,600円となります。

さらに別売りのタイマー(1個1,500円ぐらい)が必要です。

それらを含めた10aあたりの年間の費用負担額は、1.8万円ぐらいとなります。

次にイチゴの収穫量と売り上げの概算を計算します。

10aのイチゴの収穫量を、全国平均の3,200kgとして、キロ単価を東京の市場価格の平均金額の1,300円とすると、10aの売り上げはおよそ416万円になります。

モスバリアのコストは、この売り上げに対して0.4%くらいになります。

収穫したイチゴの1%がアザミウマの被害を受けて出荷できない場合、その被害額は4.16万円です。

さらに被害が大きかった場合の被害額は以下の通りです。

これはあくまでも概算ですので、実際には一軒一軒収穫量も違いますし、販売の金額も違うということをご理解ください。

モスバリアを設置したからと言って、アザミウマの被害を100%防げるわけではありませんが、実際にシクラメンやバラの栽培では、農薬散布の回数を半減できたという実績もあるそうです。

例えば、イチゴでも5~20%の防除効果があると仮定すると、下の表のような結果になります。

表の中で黒字で記載されているところが、費用対効果が高いと考えられる項目です。

つまり、アザミウマの被害に悩まされている農家ほど費用対効果が大きいのでおすすめできるということです。

一方で、アザミウマの被害が少ない農家の場合は、費用対効果は少なくなるものの、モスバリアを設置することで、農薬散布の回数を減らすことができる可能性があります。

そうすると農薬散布の手間とコストを減らすことができます。

1株あたりのコスト負担額

10aあたりのイチゴの株数を6,500株とすると、年間1.8万円の費用負担の場合、1株あたりのコストは2.8円となります。

育苗コストが1株あたり2.8円増えたとしても、悩むほどの金額ではないと思います。

モスバリアをおすすめする人、しない人

ここでは、モスバリアをおすすめする人、しない人について説明していきます。

まず、モスバリアをおすすめする人は以下の通りです。

  • アザミウマの被害が多くて悩んでいる人
  • ハウスに発生しているアザミウマがミカンキイロアザミウマだと判明している人
  • アザミウマ対策の農薬の使用量を減らしたい人
  • 赤色の防虫ネットや天敵製剤を試したけど、その効果に満足できていない人
  • 少額の設備投資で試してみたい人
  • 農薬を減らす取り組みをすることで顧客満足度が上がるイチゴ狩り観光農園を運営している人
  • まだ他の農園では試していない新しいことに挑戦したい人
  • 小さな労力で効果を出したい人

このような人におすすめします。

一方で、以下のような人にはモスバリアの設置はおすすめできません。

  • ハウスに発生するアザミウマの種類がほとんどヒラズハナアザミウマの場合
  • 農園の経営者が高齢で近いうちに閉園を考えている場合
  • 向こう10年使える設備投資をするのがもったいないと感じる人

以上のような方にはおすすめできません。

イチゴの病気と害虫対策を紹介〜農薬以外のアザミウマ防除方法とモスバリアの実験結果〜のまとめ

今回は、イチゴの栽培で問題になる病気、害虫、その対策、モスバリアの実験結果や費用対効果などについて紹介しました。

初期投資はある程度掛かってしまうものの、約10年は使用できることや、特にミカンキイロアザミウマに対してはその効果が実証されていることなどを考えると、条件さえ合えば設置してみる価値のある対策方法だと思います。

またアザミウマの被害がそれほどひどくない場合でも、アザミウマ対策のための農薬の散布回数を減らすことができる効果もあります。

まだまだ新しい技術なので、今後もっと詳しい研究結果などが明らかになっていくことでしょう。

動画でも紹介していますので、ぜひご覧ください。