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いちごの苗作りで太郎苗は使えるのか?病気は?収穫は?家庭菜園と農家の場合は?

今回は、イチゴの太郎苗は使えるのか?というテーマでじっくり解説していきます。

家庭菜園向けと農家向けのどちらの方にも参考にしていただける内容になっています。

  • 太郎苗って何?
  • 現在イチゴを育てているが、太郎苗を使うかどうか悩んでいる。
  • そもそも太郎苗を使うことでどんな問題があるの?

このような疑問や要望がある方は、ぜひ最後までお読みください。

イチゴの太郎苗とは?

イチゴの太郎苗とは何かというと、イチゴの親株から発生したランナーにはいくつかの新たな苗ができていきますが、その新たに出来た苗を一番目から順に「太郎、次郎、三郎、四郎…」と男性の子供に見立てて呼ぶことに由来しています。

つまり、親株から発生したランナーに一番最初にできた苗を「太郎」と呼びます。

これが太郎苗の名前の正体です。

本やインターネット、現役のイチゴ農家の方や苗屋さんなどの情報を見る限り、この太郎苗をイチゴの栽培に使用することについて賛否が分かれています。

「太郎苗は苗づくりには使うべきではない」という意見がある一方で「太郎苗を使っても問題はない」という意見もあります。

今回、この記事では「太郎苗を使っても問題はない」という立場から、その根拠も踏まえて解説していきます。

太郎苗を使ってはいけないと言われている理由

前述のように世間では「太郎苗を使うべきではない」という意見が多く見受けれますが、ではなぜこのような意見が多いのでしょうか?

その根拠としては以下のようなことが挙げられます。

  • 使いづらいから
  • 生産力が親株よりも劣るから
  • 親株の病気を受け継いでいるから
  • 太郎株は苗が老化するから
  • 昔からそう言われてきたから

もしかしたら、この他にもいろいろな根拠があるかもしれませんが、「太郎苗を使うべきではない」という意見の根拠はこのいずれかに当てはまることが多いです。

この太郎苗を使うか使わないかという意見については、家庭菜園をされている方だけでなく、農家や育苗業者などの間でも意見が分かれています。

「太郎苗を使うべきではない」という意見に対する反論

前述した「太郎苗を使うべきではない」という意見の根拠を分析し、要因として考えてみると、以下の4点にまとめることができます。

  1. 苗の老化
  2. 葉齢(苗の年齢)
  3. クラウン径(苗の大きさ)
  4. 病気

ここでは、「太郎苗を使っても問題はない」という立場から、上記4点について一つずつその根拠も示しながら反論していきます。

1.苗の老化について

苗が老化する要因としては、以下の2点が挙げられます。

  1. 肥料や水がかなり不足してしまい、根が枯れてしまった。
  2. 苗づくりの期間が長くなり過ぎたことで、ポットが詰まってしまった。

1については、追肥や水やりを不足しないようにしっかり行うなどをすれば解決できます。

2については、苗づくりの期間を短くしたり、容器の大きさをもっと大きくするなどの対策をとることで解決できます。

この苗の老化については、太郎苗だけに起こることではなく、次郎や三郎についても同様に起こり得る問題です。

これだけでは、太郎苗を使うべきではないという理由にはならないと思います。

2.葉齢(苗の年齢)について

例えば下の写真の太郎と次郎を比較してみると、葉っぱの枚数が太郎は3枚、次郎1.5枚と葉齢(苗の年齢)に差が出てしまっています。

この生育の差でどんな問題が起こるかというと、その後の花が出るタイミングや大きさにばらつきがでたり、収穫のタイミングや実の大きさにばらつきが出ることなどが考えられます。

一般的に、苗は均一に育てたいという意見の方の場合に、太郎苗のこの葉齢の差が問題視されています。

ただ、これについても太郎苗に限った問題ではなく、次郎と三郎の間にも必ず葉齢の差は生まれますし、苗を何に固定するかによっても、それぞれの株の生育にばらつきは必ず発生します。

葉齢のばらつきを問題視するのであれば、それを対策する方法もありますし、ばらつきが出ることによって長期間収穫が続けられるなどのメリットもあります。

これらのことからも、葉齢の差が理由で太郎苗を使うべきではないということにはならないと思います。

3.クラウン径(苗の大きさ)について

イチゴにも茎は存在しますが、短縮径と呼ばれるかなり短い茎になります。

この短い茎の部分をクラウンと呼び、そのクラウン径(短い茎の太さ)を苗づくりの基準として使います。

一般的には、このクラウン径は10mm弱ぐらいが良いとされています。

8~10mm程度の太目のクラウンの苗を作ることで良い苗に育ち、収穫量も多くなると言われています。

このクラウン径について「太郎苗を使うべきではない」という意見の根拠として以下のようなことが挙げられます。

  1. クラウン径にばらつきが出るから
  2. 太郎苗のクラウン径は太過ぎるのでよくない

1については、太郎苗に限ったことではなく、次郎や三郎でも同様にクラウン径のばらつきが発生します。

これも葉齢の問題と同様に、ばらつきをなくしたければ解決策はありますし、そのばらつきを有効活用する手段もあるため、太郎苗を使うべきではないという理由にはならないと思います。

2については、太郎と次郎を比較した場合のばらつきが許容範囲であったとしても、太郎と三郎を比較するとクラウン径の差があまりにも大きいということはあり得ます。

このような場合に、なるべくばらつきを抑えるために次郎と三郎を残して、太郎は太すぎるので使わないという意味での「太郎苗を使うべきではない」という意見であれば、とても理にかなっていると思います。

4.病気について

太郎だと病気に感染している可能性が高いため、「太郎苗を使うべきではない」という意見があります。

親株が病気に感染していた場合、太郎、次郎、三郎とを比較すると、太郎が病気に感染している可能性が一番高いという点では、その通りだと思います。

但し、これも太郎が一番親株の持っていた病気に感染する可能性が高いというだけで、次郎や三郎についてはその可能性が下がるというだけで、絶対に感染しないというわけではありません。

そもそも、親株が病気を持っているということ自体が問題であって、親株にするのであれば、病気にはほぼ間違いなくかかっていないクリーンな苗を使用することが大前提です。

親株が病気にかかっていない個体であれば、太郎であろうが次郎であろうが三郎であろうが病気に感染していることはありません。

またこの病気については、例えば炭疽病などは水はねでも感染することがあります。

「炭疽病が怖いから太郎苗は使わない」と言っておきながら、水やりに散水チューブや上からの散水ノズルを使ったり、手で散水をしていると、水はねが必ず起こり炭疽病に感染する原因になります。

このうよなことからも、病気に感染するリスクを理由に太郎苗を使うべきではないということにはならないと考えられます。

4つの要因に対しての対策のまとめ

前述した「太郎苗を使うべきではない」とされる4つの要因に対しての対策をまとめると以下のようになります。

対策1.クリーンな親株を使う

イチゴの苗を育てる場合には、クリーンな親株を使うようにしましょう。

そもそもクリーンな親株を使っていれば、太郎に病気が感染するリスクなどを心配する必要がなくなります。

逆に病気に感染している可能性のある親株を使用してしまうと、太郎苗に限らず、次郎や三郎も病気に感染するリスクが発生します。

太郎苗が良い悪いという以前に、クリーンな親株を使うのが大前提です。

対策2.苗の大きさを分けて管理する

苗のばらつきを抑えるために、「太郎苗を使うべきではない」という意見に基づいて太郎苗を使わずに次郎や三郎だけを使うというのは、一つの正解だと思います。

ただ、別の方法として、そもそも太郎、次郎、三郎と全て苗を作ってしまい、それらを太郎だけ、次郎だけ、三郎だけに分けてそれぞれ管理すれば、苗のばらつきが出る問題は解決できます。

最終的に大、中、小と分けて苗を管理することで、それぞれの花をつけるタイミングや収穫のタイミングを管理しやすくなります。

この方法であれば、全ての苗が一斉に収穫を迎えて収穫量が一気に落ち込む時期が被ってしまうということも防ぐこともできます。

さらにもう一つの方法としては、太郎や次郎など苗の大きさを分けて管理するのではなく、大きさにばらつきのある状態で育てながら、その後の管理で生育をコントロールして最終的にばらつきを抑える方法もあります。

例えば水やりや肥料、葉かきなどのやり方を工夫することで、大きめの苗については生育を抑え気味に、小さめの苗については生育を早めるような育て方をして、最終的に大体同じような苗のサイズにコントロールすることが可能です。

対策3.水やりや肥料をしっかりとやる

太郎苗に限らず、苗の老化を防ぐためには、その苗にあった最適な管理をすることが基本になります。

それを怠ると、根っこの部分が茶色くなったり、黒っぽくなったりして、苗の状態はすぐに悪くなってしまいます。

しっかりと水や肥料を与えていれば、白くてきれいな健全な苗を育てることができます。

ただ、この最適な管理というのは、イチゴの育苗の仕方によっても変わってきます。

例えば、ポットを使って育てる場合などは、土の量がしっかりとあるので、比較的長い期間良い状態で苗を維持しやすいです。

但し、小さい容器で育てる場合や水苔や不織布を使って育てる場合、連結トレイなどの培地量が少ない栽培方法などの場合などは、長期間苗を良い状態で維持するのが難しい場合もあります。

家庭菜園向けの話

ここでは、家庭菜園の視点から太郎苗を使うべきかどうかについてお話します。

クリーンな親株はどこで入手できるの?

太郎苗を使うかどうか以前の問題として、病気にかかっていないクリーンな親株を使うことが大前提であるというのは前述の通りです。

では、クリーンな親株はどこで入手できるかというと、実は家庭菜園の場合、それを入手するのはかなり困難です。

中にはホームセンターで売っている苗だからクリーンな苗だと思っている方もいるかもしれませんが、実はホームセンターやネット通販で購入できる苗は、クリーンな苗ではありません。

クリーンな苗というのは「ウイルスフリー苗」と呼ばれるものになります。

対して、ホームセンターなどで販売されている苗は「ランナー苗」と呼ばれるもので、病気にかかっていないウイルスフリー苗ではありません。

そのため、炭疽病や萎黄病にかかっている可能性があります。

ウイルスフリー苗は、基本的に農家向けの販売を前提とされており、一般向けの販売はされていません。

苗を販売している専門業者などに問い合わせをすれば、個人でも購入はできるかもしれませんが、その場合でも1株だけや3株だけなどの小ロットでの購入はできません。

基本的には最低でも30~50株からなど、まとまったロット数の苗を発注しないといけないため、家庭菜園のために苗を購入することを考えると、あまり現実的ではありません。

このように家庭菜園では、病気にかかっていないクリーンな親株を用意することが難しいため、太郎株であろうとなかろうと、病気に感染するリスクは常にあります。

水はねによる病気の感染の問題

家庭菜園の場合、完全に雨の当たる場所で苗を育てていたり、室内など雨が当たらない場所で育てていたとしてもジョウロで水やりをしたりと、常に水はねが起きやすい状況で栽培をしていることがほとんどです。

そうすると、いくらクリーンな親株を用意したとしても、そこに少しでも炭疽菌があれば、その苗は水はねによって炭疽病に感染してしまいます。

つまり、太郎苗を使うかどうかで病気が防げるかどうかは関係ないということです。

このようなウイルス病を防ぐためには、ウイルスへの感染対策を行うことが必要になります。

具体的には、ウイルスを媒介するアブラムシを徹底的に排除することですが、家庭菜園の場合、アブラムシを徹底的に根絶させるのはかなり困難です。

農家の場合であれば、少しでもアブラムシが付かないように、予防的な農薬散布を行ったりしますが、少量しか苗を育てていない家庭菜園の場合には、そのためだけに農薬を準備するのはなかなか難しいのではないでしょうか。

苗の大きさのばらつきについて

家庭菜園の場合、苗の大きさのばらつきについてはあまり気にする必要はないと思います。

農家の場合であれば、決まった日にイチゴを出荷しなければならなかったり、できるだけ均一に育てて同じように管理をする必要がありますが、家庭菜園の場合は苗にばらつきがあってもそこまで問題にならないはずです。

つまり、太郎苗を使うことによって苗の生育にばらつきが出たとしても、家庭菜園ではあまり問題はないということになります。

そもそも育てる苗の数が少ない

家庭菜園の場合、そもそも育てる苗の数が少ないです。

そのため、もしそこで病気など何か問題が発生したとしても、それが太郎苗を使ったことが原因というよりも、単純に苗の個体差である可能性のほうが高いです。

10株以上育てて平均するなどの統計をとるなどすれば別ですが、1株とか3株とかのレベルで何か問題が発生しても、それは何らかの例外であったり個体差である場合がほとんどです。

また、太郎苗を使って何か問題が発生した際に、他に原因があるにも関わらず「これは太郎苗を使ったからだ!」とスケープゴートにされることが多いようにも感じます。

その原因が太郎苗を使ったからだと決めつけるのではなく、水や肥料や日当たり、使っている品種や個体差など何が問題だったのかを総合的に判断するようにしましょう。

農家向けの話

ここでは、農家の視点から太郎苗を使うべきかどうかについてお話します。

現実的に太郎苗だけ取り除くのは不可能

イチゴ農家の場合、個人で小規模で経営している場合であっても数万株以上の苗を作っており、大規模な農園にもなると20万株以上の苗を作っているところもあります。

そこまでの数の苗を管理するとなると、作業性や効率がとても重視されるようになり、その無数の苗の中から太郎苗だけを取り除くというのは、事実上不可能です。

基本的には、太郎かどうかではなく、育てた苗の中から生育が悪いものだけを取り除いていくという方法がほとんどです。

また、農家の場合、病気のリスクを考えて、定期的にウイルスフリー苗を導入しているところが多いです。

そのため、根本的な病気のリスクを回避できていることもあり、太郎苗だから使わないというのはあまり合理的ではありません。

一方で、ウイルスフリー苗は高いから使わないという農家もありますが、ウイルスフリー苗を止めてから、それまでなかった炭疽病に悩まされることが多くなったという話もよく聞きます。

これについても、太郎苗を使ったかどうかというよりも、水やりの方法や道具の洗浄など、苗づくりのシステム自体を整えない限り、太郎苗を取り除くだけで解決できる問題ではありません。

苗の大きさのばらつきについて

家庭菜園と違って、大規模に苗を育てている農家の場合、意図的に苗の大きさを大、中、小に分けて管理するというのは、作業の効率面を考えても合理的ですし、収穫時期を分散させるという意味でもとても有効な方法です。

また、苗の育成の管理によって大きさにばらつきがあった苗を、最終的に同じ大きさに揃えて、収穫時期を揃えるというのも、農家の腕があればそれほど難しいことではりません。

つまり、いずれにしても太郎苗だけをわざわざ取り除くというメリットはあまりないということが言えると思います。

イチゴの太郎苗は使えるのか?のまとめ

今回はイチゴの太郎苗は使えるのか?というテーマで、主に賛成の立場からその根拠や、家庭菜園と農家のそれぞれの視点からその是非を考察しました。

最終的に、イチゴの太郎苗は基本的に使っても全く問題はなく、場合によっては使わないという選択肢もありではないかというのが今回の結論です。

動画でも紹介しているので、ぜひご覧ください。