今回はトマトの脇芽を使って苗を作る方法を解説します。
この「トマトの脇芽を使って苗を作る方法」は母親から教えてもらって、私が中央アメリカのパナマ共和国の農民に教えた方法です。
その方法を今回は皆さんにご紹介します!
最後に種苗法について説明していますので、実際にトマトの脇芽で苗作りされる方はご一読ください。
- 大きくなったトマトの脇芽、捨てるのがもったいない!
- 脇芽で増やした苗から収穫したトマトは販売できる?
- そもそも、種苗法って何?
という方におすすめの記事です。
トマトの脇芽から苗を作る方法の生立ち
実はこの「トマトの脇芽を使って苗を作る方法」は、私が母親から教えてもらった方法です。
私の実家は農業をしており「トマトの脇芽はこういうことをすると苗として使えるよ」と教えてもらいました。
それを実践したのが、青年海外協力隊の野菜栽培隊員としてパナマ共和国の無電化農村へ行った時です。
青年海外協力隊の野菜栽培指導
その時私は、パナマの山奥の貧しい農民たちに、野菜の育て方を教えていました。
そこではお金がなくてトマトの種を買うことなんて出来ませんでした。
「じゃあ、トマトの苗を1個買ってきて、そこから出た脇芽をみんなで増やして育てれば、種代がかからずに、無限に苗が増やせてめっちゃいいじゃん!」
ということで、その技術を青年海外協力隊として中央アメリカで教えました。
トマトの脇芽を観察
トマトの脇芽を観察してみましょう!
トマトの脇芽から苗を作る時は大きな脇芽がおすすめ
ここにあるのはトマトの脇芽です。
この脇芽はこちらの株から抜き取ったばかりです。
脇芽というと、こういう小さな脇芽もあります。
これぐらいの小ささだと発根しない可能性があるので、小さな脇芽は苗作りにおすすめしません。
「脇芽の葉っぱが6枚出ちゃった!」とか「影に隠れてて見えなかった!」というような、大きくなった脇芽が使えます。
トマトの脇芽から苗を作るまでの流れ
まず大きくなった脇芽をペットボトルやバケツでもなんでもいいので、水に浸けておいてください。
必ず水は1日1回交換しましょう。
そうすると2、3日で根っこが生えてきます。
それからもう少し根っこを出させてから土に植えます。
直射日光が当たる場所だとすぐ萎れてしまうので、土に植えて日陰で育てましょう。
そこで頻繁に、朝晩2回ぐらい(1日2回ぐらい)水をかけて発根を促してください。
すると、十分苗として使えるようになります。
以上が全体の流れです。
脇芽で作った苗を植える時期
今撮影しているのが6月上旬です。
商業的にトマト栽培している方なら植える時期をずらすこともありますが、日本で家庭菜園をする場合は6月上旬にトマトを植えるのは遅いです。
家庭菜園でやる場合、普通は4月下旬や5月上旬にトマトを植えている人が多いのではないでしょうか。
しかし、脇芽を取って苗を作ると、苗が使えるようになるのが6月や7月くらいです。
「そこまで遅くなるなら、やる意味ないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、4月や5月に植えたトマトの収穫が終わったり生育が悪くなってきた時期に、脇芽から育てたトマトが収穫を迎えるといったように収穫時期をずらすことができます。
ただあまり遅い時期、日本の場合10月11月頃になったら屋外でトマトの収穫ができなくなってしまいます。
寒さに当たってトマトが死んでしまうので、この技術は9月などのあまり遅い時期にはやる意味がありません。
なので春先から初夏ぐらいのタイミングでやらないとダメです。
水に浸けて5日経ったトマトの脇芽
トマトの脇芽をペットボトルの水につけてから5日が経ちました。
5日経った様子をご紹介します。
水に浸けて発根したトマトの脇芽
水から出してみます。
こんな風に茎から根っこが生えてきました。
すごいです。もう何十本も根っこが生えてきています。
トマトはこんな風に茎から根っこが生えてきます。
これを土に植えれば苗として使えます。
これは非常によく根っこが生えてる苗です。
他の脇芽も見てみましょう。
こっちは根っこが全く出ていません…あ!1本出てます。
この苗は根っこが1本だけひょろっと生えてます。
こんな風に脇芽は物によって、根っこが出やすかったり出にくかったりします。
次の脇芽も見てみましょう。
こちらの苗もまあまあ生えてます。
短い根っこが何本か生えてきました。
次の苗も4本くらい根っこがわずかに生えてきました。
最後の脇芽は根っこが生えてきてないです。
こんな風に苗によって根っこの出やすさには違いが生まれます。
トマトの脇芽を土に挿して育てる方法もある
今回はペットボトルの水に脇芽をつけておきましたが、直接土に挿して育てる方法もあります。
その場合は根っこが生えてくるまで土を乾かしてはいけないので、1日2、3回は水を与えて土の湿り気をキープしてください。
それから直射日光が当たると蒸散量が多くなりすぎます。
なので、完全な日陰でやるか強めの遮光をして水分量を調節し、葉からの蒸散量を抑えてください。
水に浸ける方法がおすすめ
私としてはバケツやペットボトルの水につける方法がおすすめです。
なぜかというと、水に浸ければ根が出やすい脇芽だけを選抜できるからです。
苗によって根っこの出やすさに違いがあります。
なので、1回水につけて発根させることで根が出た脇芽は苗として使い、根が出なかった脇芽は使わないといった判断ができます。
なので、
- わき芽を水に浸ける
- 発根したものだけポットに植える
というのが私のおすすめです。
トマトの脇芽をポットに植える方法
では、トマトの脇芽を植えてみましょう!
根が出た部分の葉と脇芽を取る
このままだと植えにくいので、必要ない葉っぱは取りましょう。
線のところまで土に埋めてしまうので、埋まるところにある葉っぱは必要ありません。
水に浸ける時に取ってしまってもいいです。
それから脇芽が出ていますが、脇芽も必要ないので取ります。
上の部分の葉っぱ残しておきます。
ポットに苗を植える
ポットに園芸培土を入れ、指で穴を開け茎をぐさっと差し込みます。
脇芽から生えてきた白い根っこが、土の中にしっかり入るようにしてください。
そうすれば、土から水分と肥料分を根っこが吸い上げてくれます。
できれば1つのポットに1株ずつ植えるのがいいですが、今回は大きいポットに2株、小さいポットには1株植えます。
注意点①脇芽を土に植えてからからしばらくの間は半日陰に置く
脇芽から苗を作るときの注意点です。
発根処理をして根っこを出させたので、多少は根っこから成分を吸い上げられます。
しかし、根の量と葉のバランスを見た時、葉が大きくて水分が十分に吸い上げられない状態です。
なのでしばらくは半日陰ぐらいの涼しい場所に置いて、葉っぱが熱くならないように注意してください。
注意点②水やりの頻度を増やす
根っこがたくさんある普通の苗にあげる時よりも、水やりの「頻度」を少し増やしましょう。
その代わり、量は普通よりも少なめでいいです。
なぜかというと、植物が吸い上げる水の量が少ないのでたっぷりあげる必要はありません。
その代わり、細かく1日2回、朝夕あげるような感じで頻度を増やしてください。
2週間経てば苗として使える
脇芽の大きさにもよりますが、2週間くらい育てればある程度根っこが生えてきます。
そうなれば普通のトマトの苗と同じように、苗として使うことができます。
例えば、4月や5月にトマトの苗を植えた方は、脇芽が今大きく育っているのではないでしょうか。
なので、6月ぐらいに脇芽を取ってポットに挿し、その脇芽を苗として増やします。
そして6月や7月に畑やプランターに植えることで、遅い時期にトマトやミニトマトを収穫することができます。
トマトの脇芽を使った苗が完成です。
あと2週間くらい苗を育てたら、鉢に植えることができます。
そのトマトの苗の植え方や植えた後の支柱立て、脇芽とりについてはこちらの動画で紹介しています。
トマトの脇芽苗は種苗法的に問題ないか?
種苗法について注意しなければいけないことを説明します。
種苗法はかなりややこしい法律で、人や組織によって解釈が多少違うこともあります。
ただし、種苗法を調べてみると、家庭菜園なら脇芽苗は合法です。
ただし、農家が品種登録されたトマト品種のわき芽を苗にすることは禁止されているようです。
人によって法の解釈が違いますし、ケースバイケースなので、自己責任でお願いします。
※今回の説明はあくまで私の見解で、条件によっては違う可能性がありますので、ご注意ください。
トマトの脇芽を使って苗を作っても良い?
今回は「トマトの脇芽から挿し木で苗を作る方法」についてご紹介しました。
実はこの方法は誰でもやっていいものではありません。
なぜかというと種苗法という法律で苗や種について色々な規制があるからです。
家庭菜園の場合はトマトの脇芽を使って苗を作ることができる
結論から言うと、家庭菜園の場合、トマトの脇芽を使って苗を作ることができます。
この記事を読んでいる方のほとんどが家庭菜園をされている方だと思います。
家庭菜園の方は今回紹介したようにトマトの脇芽を使って苗を作ることができます。
これは品種登録されている品種でも品種登録されていない品種でも、どちらでも問題ありません。
家庭菜園の場合でも脇芽を使って増やした苗から収穫したトマトを販売することは禁止
ただし、脇芽を使って増やした苗から収穫されたトマトを販売することは禁止です。
そもそも収穫した果実を販売したら家庭菜園ではなくて「農家」というカテゴリーになります。
なので、家庭菜園の方がトマトの脇芽を増やして収穫した果実を販売することはダメですし、してはいけません。
家庭菜園の方が脇芽を使って増やした苗を無料で譲ったり有料販売する場合
品種登録されていない品種の場合は、無料であげることは可能です。
ただし、その苗を有料販売するのは禁止です。
品種登録されている品種の場合は、無料であげるのも有料販売するのもどちらも禁止です。
家庭菜園でやる場合には品種登録されている品種でも、されていない品種でも脇芽を使って苗を増やすことは可能です。
家庭菜園としてやられている方や実を収穫しても販売しない方は脇芽を使って苗を作って、それを栽培して実を取って食べることは可能です。
農家の方が品種登録されていないトマトの脇芽で苗を作る場合
トマトは自家増殖禁止作物に指定されています。
ですが品種登録されていない品種の場合には、脇芽を使って苗を増やすことが可能です。
また、そこから収穫した果実を販売することも可能です。
できた脇芽の苗を無料で譲ったり販売することも可能です。
農家の方が品種登録されているトマトの脇芽で苗を作る場合
農家の方が品種登録された品種の脇芽を使って苗を作ることは禁止されています(自家増殖が禁止されている場合)。
もし苗を作ってしまったとして、そこから果実を収穫して実を販売することももちろん禁止です。
それから脇芽を使って作った苗を販売したり、無料で譲る行為も禁止です。
今説明した通り、農家の方がトマトの脇芽を使って苗を作ることにはかなり規制がかかっています。
品種登録されているものに関しては基本的に禁止です。
プロの農家で脇芽を増やして使う方はほとんどいないと思います。
品種登録されているものに関しては禁止になっているので気を付けて下さい。
品種登録されているかどうか見極めるのは難しい
どれが品種登録されているかはとても難しい問題です。
種苗会社によって品種登録を積極的にする会社もあれば、あまりしない会社もあります。
品種登録の期限が切れることもあります。
トマトはほとんどがF1品種
トマトはほとんどがF1品種といわれる品種です(トマトも限らず多くの野菜がF1品種ですが)。
F1品種とは、その世代だけに特徴が現れる品種のことです。
なので、 F1品種のトマトから種を採取しても、種を採集したトマトに現れた特徴は次世代には引き継がれません。
トマトは親同士の掛け合わせで生まれているので、全てのトマトを品種登録したところであまり意味がありません。
F1品種の場合は親株の権利さえ確保すれば、我々が同じ品種を作ることはできないからです。
その上、品種登録の手数料を節約するために品種登録しない会社もあります。
しかし、必ず品種登録する会社もあります。
品種登録された名前と商品名が違うことがある
品種登録されているかどうかは、農林水産省の品種登録データベースで検索すればわかります。
ただし、品種登録されている名前と売られている商品名は違うことが多いです。
なので自分が持っている苗が品種登録されているのかどうか見極めるのはかなり難しいです。
種苗法についてまとめ
【農家の方が脇芽を使ってトマトの苗を増やす場合】
- 品種登録されている品種は禁止
- 品種登録されていない品種は可能
【家庭菜園の方が脇芽を使ってトマトの苗を増やす場合】
- 品種登録されている品種でも、品種登録されていない品種でもどちらでも可能
すごく大雑把に説明すると上記のようになります。
トマトを脇芽から挿し木で苗を作る方法のまとめ
今回はトマトの脇芽を使って苗を増やす裏技的な方法をご紹介しました。
今回の内容はこちらの動画で詳しく説明しています。