今回はイチゴの花について徹底的にご説明します。
大きくて綺麗な果実を収穫するためには綺麗で整った花をつけさせることと、その花をきちんと受粉させることが大切になってきます。
- イチゴの花について詳しく知りたい
- イチゴの実を大きくしたい!
という方は、ぜひ最後までご覧ください。
実際のイチゴの花
こちらのイチゴの花を使って説明します。
①の花は咲き終わり受粉が終わって小さな果実ができ始めています。
②の花はそろそろ花びらが落ちて咲終わりという状態です。
③の花は咲いたばかりでまだ受粉が終わっていない花です。
③の花が生まれて②の花になって、その後に①のようになるという形です。
うどんこ病についてはこちらの動画で詳しく説明しています。
イチゴの花の塊を花房と呼ぶ
イチゴの花は塊で出てきます。
この塊のことを花房(かぼう)と呼びます。
花房の発生は品種によって違ったり、その時の株の栄養状態によって違います。
特に海外の品種と日本の品種では大きく異なっています。
日本の品種の中でも、ここにあるイチゴの品種は少し変わった品種なので珍しい出方をしています。
一番大きなイチゴの花は一番大きな実になる
ペンで指し示している実が一番大きい実です。
一番大きい実は一番大きい花です。
一番大きい花は一番最初に咲きます。
なので、我々はこれを一番花(一番果)と呼びます。
この一番花の両脇から花が4つ発生しています。
一番花が付いている茎から伸びている花を二番花(二番果)と呼びます。
このイチゴの品種は少しイレギュラーな形です。
本来は一番花は1つ、二番花が2つです。
その二番花のさらに脇についている花を三番花(三番果)と呼びます。
一番最初に出てくる花を一番花、その両端に出てくる二番目を二番花、その次は三番花と呼びます。
通常、三番花は二番花の両脇についているので、それぞれ2つずつ合計で4つ出てきます。
ただ、イチゴの品種やその時の株の状態によってこのような数になることもあります。
更にいうと、花坊は反対側にも同じようなセットがあります。
一番大きな実が一番花、その両脇に二番花、さらに二番花のところから三番花が発生しているという形です。
このイチゴはイレギュラーな品種なので参考にしずらいですが、イチゴは最初に咲いた花から一番花と呼んでいます。
基本的に一番花、二番花、三番花とあった場合、一番花が一番大きな花です。
二番花が二番目に大きな花、三番花が三番目に大きな花という順番になります。
花の大きさは果実の大きさに直接影響するので、一番花が一番大きな実になります。
次に大きなのが二番花、三番花が最も小さいです。
三番花の両脇から四番花、五番花というのが発生することもあります。
なので花房は一つしか花をつけない場合や、多いものだと20個ぐらい花をつけることもあります。
これは品種と株の栄養状態によって変わります。
イチゴの雌しべと雄しべについて
イチゴの雌しべと雄しべについて説明します。
花が咲いた初日は、実は雄しべには受粉機能がありません。
雌しべは開花する1~2日くらい前から受粉機能を備えています。
なので花が咲いた瞬間というのは、ミツバチや風を利用することで雌しべは受粉ができますが、雄しべは受粉することができません。
開花してから1〜2日ぐらい経つと、雄しべから黄色い粉(花粉)が出てきます。
これが花粉です。
花粉が出れば、雄しべも受粉能力を持つようになります。
もちろんその時、雌しべは受粉能力を持っています。
イチゴは自分の花の中で受粉をする場合もありますし、他の花の花粉がつくこともあり得ます。
1つの品種同士で受粉することもありますし、他の花の花粉を使って受粉することもあります。
なので、イチゴは1つだけの品種で栽培することもできますし、2~4つと複数の品種で栽培することもできます。
イチゴのつぶつぶの数=果実の大きさ
イチゴの果実は直接的に花の大きさの影響を受けるといいました。
それがどういうことかを説明します。
中心にある雌しべの数=イチゴのつぶつぶの数です。
つぶつぶの数と果実の大きさは比例します。
なので、つぶつぶの数が大きければ大きい程、果実は大きくなります。
つぶつぶの数が少なければ少ないほど果実は小さくなります。
つぶつぶの数=雌しべの数ということは、雌しべの数が少なければ少ないほど小さく、多ければ多いほど果実が大きくなるということです。
実はイチゴは果実がなってから果実の大きさが決まるのではなくて、花が咲いた時点で果実の大きさは決定しています。
更に、花が茎頂分裂組織で分裂した時点で雌しべの数はほぼ決まっています。
花が咲くもっと前、組織が分裂した時点でおよその果実の大きさは決定しています。
なので「摘花(花を摘むこと)をして果実を大きくしましょう」と言っている方がいると思いますが、それは間違いです。
今ここで花を摘花しても、この果実が大きくなることはあり得ません。
なぜかというと、果実の大きさはもうほぼ変わらないからです。
花の時点で決まっていますし、花ができる前の茎頂分裂組織で花芽が分化した時点で既に果実の大きさは決定しているからです。
何のために摘花するかというと、摘花をすることで今ちょうど分裂を始めた花、それからこの後分裂をする花が大きくなるからです。
今の果実の大きさを大きくするために摘花するのではなくて、およそ2ヶ月先ぐらいの果実のために今摘花をします。
これはかなり多くのイチゴ農家の方が勘違いしています。
花びらが落ちてしまったイチゴの花は受粉機能がない
この花を見てもらうと、もう花びらが落ちています。
こうなってしまうと雌しべも雄しべも受粉機能を失っています。
なのであとは雌しべの部分が受粉していれば肥大を始めます。
もし雌しべが受粉していなかった場合は、つぶつぶ(痩果といわれている部分)が肥大をしないので果実の形が変な形になってしまいます。
イチゴの花は脇から出ているわけではない
次に花の出方を見てみましょう。
イチゴの花はよく脇から出てくると言う方がいますが、それは間違いです。
軸を見てみると、確かに中心のある葉っぱ比べて脇から出ているように見えますよね。
なので、脇から出ていると思ってしまうと思いますが、実は違うんです。
実はこの花は芽の中心部分で分化して、すぐ脇の脇芽が主芽に変わったんですね。
その結果、まるで脇から出ているかのように見えてしまうということです。
実際には花房が付いている茎は以前までは中心だったということです。
今はその脇から発生した芽が主芽に代わっているという状態です。
今ついているイチゴの花は約2ヶ月前に分化した実
5月頭に出ている花はだいたい2ヶ月ぐらい前に分化したものになります。
なので3月ぐらいに花芽分化したものです。
今年に入ってから花芽分化して、それが今咲いて、これから収穫を迎えるという感じです。
ただ、3月頭に発生した花は前年の秋の10~11月に分化したものが生育を止めた株の中心部で眠っていて、それが翌年の春に出てきて花を咲かせるというような形になります。
イチゴの花びらの枚数は主に5〜6枚
イチゴの花びらの枚数は特に決まりがあるわけではなく、主に5~6枚のことが多いです。
株の栄養状態が良いときには8枚など、かなり枚数が増えることもあります。
だからといって、花びらが3枚になるとか2枚になるという事は滅多にないです。
花びらの数は基本的には5~6枚以上という感じです。
植物の栄養状態が良いときには花びらの枚数が多くなったり、雌しべのサイズが大きくなって結果的に果実のサイズが大きくなります。
「それなら、植物の栄養状態を良くすればいいんだ!」と思うかもしれません。
しかし、植物の栄養状態が良すぎると今度は雌しべ自体の形が悪くなってしまったり、その結果として果実の形が悪いとか果実の一部が白くなってしまうなどの問題が起きてしまいます。
なので栄養状態もちょうどいい状態にコントロールするというのが商業上はかなり重要なポイントになります。
イチゴの花につく害虫アザミウマ
花につく害虫で一番有名なのはスリップスもしくはアザミウマといわれているものです。
それは何かというと、黄色い雌しべの中心部分に住む小さくて黒い虫です。
アザミウマが住むと雌しべの上の部分が茶色く汚れてしまいます。
その結果、果実が硬くてバリバリした変な食感になったり、茶色く汚れて見えてしまうので商品価値がなくなってしまいます。
なので、雌しべの中心部分に黒くて小さな虫がいる場合、おそらくスリップスという害虫ですのでその対策が必要になります。
アザミウマについてはこちらの動画で詳しく説明しています。
【農家】いちごの花と摘花の効果をプロが解説まとめ
今回はイチゴの花について徹底的に詳しく解説をさせてもらいました。
- 塊で出てきたイチゴの花は花房と呼ぶ
- 咲いた順番に応じて一番花・二番花・三番花という
- イチゴの雄しべは開花後から2日くらいから受粉機能を持つ
- 雌しべの数=つぶつぶの数=イチゴの大きさ
- 摘花しても今ついている実は大きくならない
- 花びらが落ちたイチゴの花には受粉機能がない
など、イチゴの花について詳しく解説しました。
イチゴ栽培をする際は、イチゴの果実だけではなくイチゴの花にもぜひ注目してみてくださいね。
今回の内容は、こちらの動画で紹介しています。ぜひご覧ください。