「家庭で綺麗な干し柿を作りたい!」と思いませんか?
今回はそんな方のために、市田柿農家の息子が干し柿の殺菌方法で4つの実験を行ったので紹介します。
干し柿の殺菌方法4種の比較実験
今回は干し柿作りの実験を行います。
何の実験かというと、干し柿を作る時に行う殺菌処理を
- 殺菌処理を全くやらないもの
- 熱湯の殺菌処理だけやったもの
- アルコールの殺菌処理だけやったもの
- 熱湯とアルコール両方の殺菌をやったもの
の4種類準備して、それぞれカビの発生の程度と実の変色の程度などを比較したいと思います。
使う柿は長野県飯田市で採れた市田柿
私の実家は長野県飯田市で果樹園をやっており、干し柿を作っています。
その干し柿は市田柿といわれている柿です。
実家で採れた市田柿
実家からその柿を送ってもらいました。
これが実家から送られてきた市田柿です。
市田柿に使う「ころ柿」です。結構大きいサイズです。
今回はこの柿を使って干し柿を作ります。
実家でもこの柿を使って市田柿を作っています。
市田柿は地理的表示保護の対象
ただ、市田柿は GI(地理的表示保護)という地理的な登録がされているので
長野県の下伊那地域で作らないと市田柿と名乗れません。
家庭でできる干し柿の作り方
こちらの記事では家庭でできるような簡単なやり方を紹介しました。
水で洗いヘタを切って皮を剥き、殺菌処理をして干すというような手順です。
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今回も干し柿作りの手順はほとんど同じです。
干し柿農家の殺菌方法
商業的な農家の殺菌方法をご紹介します。
まず、柿を干すときにはクリップが付いた紐を使います。
干し柿専用の干す紐で、最近はネット通販でも買えます。
こういうものが無い方はビニール紐で大丈夫です。
たくさん干し柿を作りたい方はこのようなものを使うと便利です。
硫黄燻蒸とは
ここにあるのが硫黄燻蒸の道具です。
まずこれが干し柿の燻蒸用の硫黄です。
硫黄は食品添加物としても利用することが認められています。
ただ使用量(残存量)などの制限があります。
これは鍋の季節に料亭などで出てくる道具です。
そこに固形燃料を入れます。
そして固形燃料に火をつけて容器をのせ、そこに燻蒸用の硫黄を出します。
すると硫黄が燃焼して、大気中に硫黄の成分を発生させることができます。
ダンボールやビニールシートなどで密閉した容器の中で硫黄を燃焼します。
その上に、皮を剥いて紐につけた柿を吊るします。
その中に柿を30分ぐらい入れて硫黄燻蒸という処理をします。
硫黄燻蒸が終わったら、外に出して干します。
これが干し柿農家がやる殺菌処理です。
硫黄燻蒸をする目的
硫黄燻蒸をする目的は大きく二つです。
- カビを防ぐ
- 柿のタンニンが酸化して黒くなるのを防ぐ
ただ、硫黄燻蒸すると硫黄の匂いが漏れ出し、非常に臭いです。
温泉地のような硫黄臭い匂いがします。
もし一般家庭でやってしまうと、かなり近所迷惑になりますし、異臭騒ぎになってしまうかもしれません。
田舎の広い空き地や自分の畑などでやれば問題ないかもしれませんが、都市部では硫黄燻蒸はできないと思います。
では、家庭でどうやってカビを防いだり皮が黒くなるのを防げばいいのでしょうか?
家庭の干し柿作りでカビを防ぐ方法
カビは気温20度以上湿度80%以上のような条件で発生しやすくなるので、気温が高かったり風がなかったりすると良くないです。
屋外に干すのであれば、雨があたらないように上に屋根がある場所に干しましょう。
また、室内に干す場合はどうしても風がなくて湿度が高くなりやすいので、扇風機やサーキュレーターなどを使って風を動かすようにしてください。
柿のタンニンが酸化して黒くなるのを防ぐ方法
家庭で真似をする方法は今のところ無いと思います。
リンゴだったら、レモン汁や塩水、酢に漬けておけば変色を防げますが、柿の場合はそのようなことをしてもおそらく効果はありません。
なので、家庭で作った干し柿が黒っぽくなってしまうのは、ある程度仕方がないと思います。
昨年、私が家庭で干し柿を作った時は熱湯での殺菌と焼酎での殺菌を行いました。
できるだけカビの発生を防ぐという目的でした。
ただ、熱湯に関しても焼酎に関しても絶大な効果が期待できるものではなく、気休め程度にやるようなものです。
干し柿作りの手順
次に干し柿作りの手順を説明します。
柿を水で洗ってハサミでヘタを切る
柿をざっと水で洗い、はさみでヘタを整えます。
ヘタが大きいと邪魔な上、ヘタの部分は非常に雑菌が多くカビが繁殖しやすいので、キッチンばさみなどで綺麗に切りましょう。
木とつながっていた部分がT字になっているとビニール紐に結びつけた時に落ちにくいです。
ただ、最近の商業的な農家向けの干し柿クリップはT字の部分が必要ないので、この柿は軸が一本です。
動画では、ヘタを切った後にもう一回しっかり洗いました。
ヘタの部分はしっかり洗ってください。
柿の皮をピーラーで剥く
先にヘタの間際だけ包丁で皮をむいて、その後ピーラーを使って皮を剥きます。
皮を剥くときはしっかりと全体の皮を剥くようにしてください。
柿を回すイメージです。包丁は動かさずに柿を回します。
どんな剥き方でもいいですが、皮の剥き残しがないよう、指をケガしないように気をつけてください。また、柿の灰汁は服につくと落ちにくいの気を付けて下さい。
剥いた皮を料理や染物などに使いたい方は使ってください。
柿のヘタをビニール紐で結ぶ
今回は柿を吊るすためにビニール紐を使います。
大量に干し柿を作りたい方は、干し柿クリップのような専用の道具を使ってください。
紐の縛り方も色々あると思いますが、解けなければいいです。
固縛りなどでいいと思います。
※動画では、一本の紐の両端に1個ずつ柿をつける方法で縛りました。
干す前の柿の重さを測る
試しに柿の重さを測ってみました。大体110グラム弱ぐらいでした。
最初の重さを測っておけば、乾燥している最中に重さを測って何%の水分が抜けたのかがわかるので、ひとつの目安になるかと思います。
「①殺菌処理を全くやらないもの」はこれで完成です。
熱湯で殺菌処理する
熱湯の中に柿の実を入れて15秒そのままにします。
柿の表面についている菌を熱で殺すということです。
実際どこまで効果があるものなのでしょうか?
たった15秒だけではあまり効果はないかもしれません。
熱湯消毒をした後に空気中の菌がいくらでもついてしまいます。
菌は目には見えませんが手にも付いていますし、空気中にもたくさん漂っています。
民間療法レベルでの殺菌処理がどれくらい効くものなのか比較してみましょう。
「②熱湯の殺菌処理だけやったもの」はこれで完成です。
柿をビニール紐で吊るす
園芸用のミニ温室のビニールを外して使い、柿を吊るす棚にしました。
それぞれガムテープを使ってラベリングをしてあります。
熱湯消毒とアルコール消毒を両方するもの、アルコール消毒だけ、熱湯消毒だけ、どちらの処理もしないものです。
アルコール(焼酎)で殺菌処理
アルコールの殺菌処理には、アルコール度数25%の焼酎を使います。
焼酎をスプレーボトルに入れてスプレーします。
アルコール度数は70%のものが最も殺菌能力が高いといわれています。
なので、私もラボで培養などの作業する時は、エタノール70%のものを使用します。
ただ今回は柿に直接吹きかけるので、アルコール度数25%の焼酎を使うことにしました。
コンビニやスーパーで売られているので手に入りやすく、柿に吹きかけても安心です。
「③アルコールの殺菌処理だけやったもの」と
「④熱湯とアルコール両方の殺菌をやったもの」が完成し、全ての柿が準備できました。
柿を干す(室内か屋外の雨が当たらない場所)
室内で干す場合はサーキュレーターを使うのがおすすめです。
サーキュレーターは扇風機のようなものです。
風をまんべんなく起こし、柿の周りの湿度が高くならないようにしてくれます。
洗濯物を干す時や観葉植物を育てる時にも、サーキュレーターがあるとすごく便利です。
なので、家に一台あるといいと思います
冬場に扇風機は使わないと思うので、扇風機を使って干し柿に風を送るのもいいと思います。
屋外に干す場合は、雨が当たらない軒下やビニールハウスなどを使ってください。
雨が当たったり、風通しが悪くならないように注意してください。
今回、私は屋外に置いておこうと思います。
干し柿に白い粉をふかせる方法
完成までに1ヶ月とちょっとかかると思います。
最初の1週間が特にカビが怖い時期です。
それが過ぎたら、今度は実を揉んで中の水分を外に出して白い粉をふかせるということをやります。
1か月くらい経って干し柿ができたらラップで包んで冷凍しましょう。
干しすぎてしまうと固くなるので気を付けて下さい。
私は昨年硬くなってしまった干し柿をブランデー漬けにして食べました。
とても美味しかったので、ぜひ皆さんもお試しください。
の動画で作り方をご紹介してます。
興味のある方は、ぜひそちらをご覧ください。
家庭でマネできる干し柿の作り方4種類のまとめ
本当の実験の場合、比較に数十個使わないとダメだと思いますが、今回は一つの試験区に実が4個だけです。
母数が少なすぎて、信頼がおけるデータと呼べませんが、遊びでやる分には4個あれば十分じゃないでしょうか。
では、今後どういう風になるのか?
4種類の殺菌方法でどんな風に違いが出るのか気になる方は、続きはこちらの記事をご覧ください。
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