今回は種まきのやり方と苗作りの方法をご説明します。
野菜作りや花栽培において、種まきというのはすごく重要な技術です。
農業業界では苗半作という言葉もあります。
苗半作というのは「農作物の出来は苗作りで半分が決まる」という格言です。
苗作りはそのぐらいすごく重要な技術です。
- 苗作りしてみたいけどやり方がわからない
- プランターに種を播いたけど半分しか芽が出ない…
- 今は他の野菜を育てているので苗作りに畑は使えないよ
という方にオススメの記事です。
苗作りをする理由
そもそもなぜ苗作りをするのか、その目的を説明します。
苗作りの目的は3つあります。
苗作りの目的①苗作りは狭いスペースででき管理作業も楽になる
1つ目は苗作りは狭い場所でできるので土地の有効活用ができて管理が非常に楽です。
苗作りの目的②苗作りをすることで農地を栽培に長期間使える
2つ目は苗作りを別の場所で行うことで、本来植える畑・プランター・ビニールハウスなどの土地を長期間使うとができます。
最初から農地に種を撒くと、種を撒いてから収穫までの期間が長くなってしまいます。
しかし、別の場所で種を撒いて苗を作ってから農地に植えれば、苗を植えるギリギリまで他の野菜の収穫ができます。
また、苗を植えてすぐに収穫が始められます。
苗作りをすることで、土地の使用期間をできるだけ長く有効的に使うことができます。
苗作りの目的③いい苗を作ることができる
3つ目は良い苗を作ることができます。
なぜかというと苗作り中は温度や水、肥料などの管理を徹底してできるからです。
- 苗のある場所の温度を上げやすい
- 虫が入ってこないようにネットができる
- 一株一株ちゃんと状態を見られる
など、丁寧な管理ができます。
広い土地で育てるよりも狭い範囲で行った方がいい苗ができやすくなります。
また、種は100%発芽する訳ではありません。
種から芽が出たとしても、それが全て健康的に育っていく訳ではありません。
苗作りをすれば、ある程度苗を選抜できます。
例えば10粒の種を蒔き、その中から8粒芽が出たとします。
そこから更に良い苗を5株選べばいい苗が手に入ります。
以上3つの目的があって、種まきをして苗作りします。
苗作りに必要な道具①ポットまたはセルトレイ
苗作りに必要なものをご紹介します。
よく使われるものは、例えばポットです。
これは紙のポッドです。
黒くて丸い形のポリポットも苗作りではよく使います。
他にもセルトレイというものもあります。
ここにあるポットやセルトレイは紙製なので少し珍しいかもしれません。
プラスチック製のポットやセルトレイ(連結している小型ポット)を苗作りではよく使います。
他には、地面に区画を決めてそこに種を播く方法もあります。
それからペーパーポットといって、紙が連結してできているポットもあります。
ペーパーポットは自動的な機械で大量に効率的に移植作業ができます。
ただ、家庭菜園で使う場合はポットやセルトレイのどちらかが使いやすいでしょう。
ポットとセルトレイの使い分け
ポットとセルトレイどちらに種をまけばいいのか疑問に思うかもしれません。
どちらを使わなければ絶対にいけないという決まりはありません。
一般的には、苗が大きくなる野菜はポットを使うことが多いです。
苗が小さい野菜、もしくは種まきから一番最初の苗の段階で非常に小さい頃にセルトレイを使うことが多いです。
例えば、ネギのように苗自体が小さいものはセルトレイに植えてそこから移植をします。
トマトの場合、セルトレイに種を播いてからポットに鉢上げして、畑やプランターに移し替えたり、ポットにトマトやナスなどの種を播いて大きくしてから畑に持っていく方法があります。
なのでどっちを使わなければいけないという決まりはありません。
野菜の苗が小さいものはセルトレイ、大きなものはポットとざっくり考えてみてください。
苗作りに必要な道具②土
次に土についてです。
一般的に野菜を地面で育てる場合、
- 土を耕やす
- pH調整をする
- 元肥を入れる
- 畝を立てる
- 野菜を植える
以上のことをします。
種まきの場合は、地面の土を使うことは非常に少ないです。
種まき用の土がホームセンターに売っているので、それを使うのが一番簡単でオススメです。
種まき用の土を作る条件①排水性と保水性が両方良い
他にも自分で種まき用の土を作る方法もあります。
自分で種まき用の土を作る場合には、4つの条件があります。
1つ目は排水性と保水性が両方良いことです。
これは矛盾した話になってしまいますが、ある程度水はけが良くてある程度水をしっかりと保ってくれる土がいいです。
ピートモスだけだと保水性が良すぎて排水性が悪いです。
逆に、礫や軽石だけだと排水性はいいけれど保水性が非常に不足してしまいます。
例えば、単体の培養土にバーミキュライトという土があります。
それを主体に土づくりをするとを種まき用にはかなり使いやすくなります。
種まき用の土を作る条件②肥料分が少なめに入っている
2つ目は肥料分が少なめに含まれていることです。
種から出たばかりの根っこは非常に敏感で、肥料分が多く含まれていると根やけといって根っこが枯れる恐れがあります。
なので、肥料分があまり多くない方がいいです。
実際、土の中の肥料分はゼロでも大丈夫です。
肥料分がゼロの場合は、芽が出てから薄い濃度の液肥を作って水の代わりに与えるのが簡単なやり方です。
種まき用の土を作る条件③病原菌や害虫、雑草の種が入っていない
3つ目は土の中に病原菌や虫、雑草の種などが含まれていないことです。
なので、地面の土をそのまま使うのはあまりオススメできません。
前年度に使っていた培養土を種まき用に使うことも出来ますが、病原菌が増えていたり雑草の種が紛れ込んだりしている可能性があるのでオススメできません。
太陽熱消毒のやり方はこちらの動画で解説しています。
種まき用の土を作る条件④培土の粒が細かい
4つ目は土の粒が細かいことです。
野菜の種の大きさはものによってかなり違いがありますよね。
例えばレタスの種は本当にすごく小さな種です。
そういう種を粒が大きい土に播くと、水やりをした時に種がどんどん流れて下の方に行ったり、種の位置が簡単に動いてしまいます。
それを防ぐために、種まき用の土は粒が小さいものが適しています。
野菜や花の種について
次は種自体の話をします。
野菜や花の種には使用期限がある
種には使用期限があるので守りましょう。
使用期間は種によって違います。
例えば、1~2年間であったり、もしくは4年ぐらいだったりします。
種を購入した、もしくは種を取ってからある程度高い発芽率(70%~80%)を保てる期間は1~4年ぐらいが多いです。
野菜の種をホームセンターやネット通販、100円ショップで購入すると裏面に使用期限が書いてあります。
なので使用期限を見て、基本的には期限内に種を使うようにしてください。
使用期限が切れた種は使えない訳ではありませんが、発芽率が下がります。
例えば半分しか芽が出ないとか、1/3しか芽が出ないということもあるので、できるだけ期限内に使うようにしてください。
野菜や花の種は温度変化や湿度変化が少ない場所に保管する
種をどこに保管すればいいのかという話です。
基本的には温度や湿度が低く急激な変化しない場所に置くようにしてください。
窓際や外に置きっぱなしというのは非常に良くないです。
屋内の涼しい戸棚の中や冷蔵庫の中で保管しましょう。
ただそういう場合は、ジップロックなどで密閉して湿度変化や結露に気をつけましょう。
野菜や花の種を播く時には前日から一晩水につけておく
種を播く時には前日から一晩、水につけておくのがオススメです。
だいたいどの野菜の種も、これをやることで発芽率が少しよくなるといわれています。
ただ野菜によってはやらない方が良いものもあります。
絶対にやらないといけないことではないので、忘れても大丈夫です。
地域ごとの種まき期間を確認する
種のパッケージには、地域ごとの種まき期間が書いてあります。
日本の野菜の種の場合、寒冷地・温暖地・暖地で分けられていることが多いです。
例えば、長野県・東北・北海道は寒冷地、それから関東・西日本は温暖地、九州は暖地という風に地図で分けてくれています。
今手元にある「西洋ふだん草」の場合、寒冷地は5月から、温暖地は4月から、暖地は2月から種を播いてくださいと書いてあります。
基本的にはこれを守れば問題ないです。
必要に応じて種まき期間はアレンンジしていい
ただ、絶対に種まき期間を守らなければいけないというわけでもありません。
「寒い地域でもビニールハウスがあるからちょっと早めに播いてみよう」とか
「ちょっと収穫時期を遅らせたいからわざと遅いタイミング播いてみよう」とか、家庭菜園の場合は色々な調整ができます。
書いてある種まき期間を目安にしつつ、ある程度自分で自由に植える時期をアレンジしてください。
野菜や花の種を播く際の注意点
種を撒く時に1つ注意して頂きたいことがあります。
それは野菜の種類によって種が発芽する時に、光が必要なものと不要なもので2種類に分かれます。
それぞれ好光性と嫌光性といいます。
好光性の野菜の種の植え方
例えば、好光性の野菜はレタス・ゴボウ・イチゴなどです。
こういう野菜は種が芽を出す時に太陽の光があったほうが出やすくなります。
なので好光性の野菜の種を撒く時には種を土の奥深くに入れてはダメです。
できるだけ土の表面近くで、太陽の光が当たるようにしてください。
嫌光性の野菜の種の植え方
嫌光性の野菜はネギ・トマト・ナスなどです。
こういう野菜は種に太陽の光が当たっているとあまり芽が出なくなる野菜です。
嫌光性の野菜の種を撒く時は土の表面で太陽の光が当たっていると芽が出にくいので、土の中に埋めて太陽の光が当たらない状態にしてください。
ただ、嫌光性の野菜の種でもあまり深くに入れてしまうと芽が出て来れずに枯れてしまいます。
また、芽が出てくるのに時間がかかったり、出てきても育ちが悪くなってしまうことがあります。
なので、土の表面からあまり深く入れすぎるのもよくないです。
例えば、1~2cmぐらいの深さが1つの目安になります。
ただこれも野菜の種類によって多少違うので、1~2cmくらいの深さを1つの目安として考えてください。
実際に野菜や花の種を播く
実際に用意した道具を使って野菜の種まきをします。
野菜や花の種の播き方①種まき用の土を用意する
右がバーミキュライトという培養土です。
かなりきめが細かいのが特徴です。
ただバーミキュライトもものによってはもう少し粗いものもあります。
バーミキュライト単体に種まきしても大丈夫です。
ただバーミキュライトには肥料分が含まれていません。
なので、芽が出てからハイポネックスのような液肥を1000倍くらいに薄めて与えるようにしてください。
左が野菜栽培用の園芸培土です。
こういう土には元肥が入っているので種を播くには少し強すぎます。
バーミキュライト3:園芸培土1ぐらいの割合で混ぜて使っていただいても構いません。
他にも鹿沼土・赤玉土(小粒)・パーライトなどを混ぜ合わせると種まきの土として使いやすいです。
今回はバーミキュライトに鹿沼土と野菜の園芸培土を混ぜて種まき用の土を作ります。
バーミキュライトに野菜栽培用の園芸培土を少し混ぜます。
野菜栽培用の培養土に肥料が含まれているので、薄めの肥料を混ぜるような感じになります。
培養土に含まれるピートモスにより、保水性もアップできそうです。
ここに鹿沼土を入れます。
鹿沼土とは、栃木県鹿沼地方で取れる土です。
赤玉土も鹿沼土もある程度保水性があり、粒状で排水性もあり使いやすい土です。
割合はだいたいバーミキュライト50%、鹿沼土25%、野菜栽培用の培養土25%くらいです。
混ぜれば完成です。
ただ鹿沼土も粒が大きいものはあまり良くないです。
粒が小さいものの方が種まきに適してます。
野菜や花の種の播き方②容器に土を入れて水をかける
次にポッドとセルトレイに土を入れます。
ポッドやセルトレイに土を入れる時、中には何も入れなくて大丈夫です。
鉢底石やネットは基本的に必要ありません。
ただ、すごく大きなポットを使う場合は穴から土が漏れてしまうことがあるので、大きなポットを使う時だけネットを入れてください。
土を目一杯入れると水やりの時に土が溢れてしまうので、土は8割ぐらいにしてください。
鹿沼土が少し大きかったので、粒が大きいもの先に入れます。
今水を撒いてきました。
先に水をまいておくと種まき後の水やりが少しで済むので種が移動しにくくなります。
あとは種を撒いてから水をさっと与えるだけで、たっぷり水をやらなくていいです。
先に水をまいておい方がやり易いです。
ただ、土がついてしまうので作業自体は少しやりにくくなります。
野菜や花の種の播き方③種を播く
今回はこちらのイチゴの種を撒きます。
こちらはとちおとめの種です。
イチゴの種の取り方はこちらの動画で紹介しています。ぜひご覧ください。
大きな種を播くと時は、指で摘んで播いてください。
小さな種を播く時には、紙を半分に折ってその間に種を入れて播いたり、ピンセットを使って作業するようにしてください。
1つのセルトレイの中に1つだけ種を撒くやり方があります。
その場合は発芽しなかったり、発芽しても少し生育が悪かったりします。
なので私としては一箇所に2~3粒くらい播いて、発芽したのもののうち生育が良いものを残して、悪いものを間引く方法がオススメです。
野菜によって播く数が少し違いますが、基本的には2粒くらい播くイメージを持ってください。
イチゴは好光性の野菜なので、土の奥深くに種を入れてしまうと発芽しなくなります。
なので、土の表面に少し置いていくようなイメージです種を播きます。
今このセルトレイの中に、4つずつ種を播きました。
野菜や花の種の播き方④指で抑える
このままにしておくこと、土と種がくっついていないので種が土から水分を吸収できません。
なので指で少し抑えて種と土がぴったりつくようにしましょう。
野菜や花の種の播き方⑤霧吹きなどで優しく水やり
次に霧吹きで水をかけます。
そうすると土と種が水で更にくっつきます。
これから水やりする時に土から種に水分が吸収されます。
これをやらないと土と種がぴったりくっつかないので、忘れずに水をあげてください。
この時にジョーロで与えてもいいですが、その場合はきめが細かいハスグチを使って優しい水をサーッとかけるようにしてください。
ハスグチをつけずに水をあげると土がえぐり取られて、土と一緒に種が流れ出てしまいます。
スプレーを使って優しく水をあげるのが私のオススメです。
こんな感じで種から芽が出てくるまでスプレーを使って水をあげてください。
芽が出てきてからハスグチが付いたジョーロに切り替えて大丈夫です。
野菜や花の種の播き方⑥播いた日などを書いたラベルをつける
種から芽が出てくるまでの期間は野菜によってかなり違います。
5日ぐらいですぐに芽が出てくるものもあるし、2週間とか下手をすると1カ月以上かかるものもあります。
なので、その時にしてほしいのがこんなラベルです。
ラベルに野菜の種類や品種、種を播いた日付を書いて挿してください。
そうしないと「あれ?ここに播いた種はなんだっけ?」とか「いつ頃播いたんだっけ?1週間経ったっけ?それとも3週間経ったっけ?」とわからなくなってしまいます。
なので、ラベルを忘れずにつけてください。
野菜や花の種の播き方⑦直射日光が当たらない場所に置く
基本的に日当たりが良い窓際のようなところや、半日陰など直射日光は当たらないけれど柔らかい日差しが届くような場所に置いておくのがオススメです。
これも野菜によって違っていて、日陰に置いた方がいい場合や温度が低い方がよく育つなど違いがあります。
それぞれの野菜や種を播いた期間によって変えましょう。
基本的に日当たりが良い場所、直射日光が当たらない場所に置いてあげるのが良いでしょう。
野菜や花の種の播き方⑧土が乾かないように水の管理する
どんな種も水が必要になるので、土が乾かないように水やりや霧吹きで水分を与えてください。
かといってあまり水がたくさんありすぎると、今度は種が腐ってしまう可能性もあるので注意してください。
この入れ物の場合、入れ物下に水をずっと貯めておかないようにしてください。
水はけの良さも大事です。
【種撒きと苗作り】野菜の種まきと苗作りのコツ!育苗培土を作る方法から水やりの仕方まで解説のまとめ
今回は野菜の種まき、それから苗の育て方のご紹介をしました。
播いてから1週間で発芽したパクチー
こちらはパクチーの芽です。
1週間ほど前に撒いた種から、こんな風に芽が出てきました。
うまくいけば種からこんな風に芽が出てきます。
皆さんもぜひ苗作りにチャレンジしてみてください。
今回の内容はこちらの動画で紹介しています。ぜひご覧ください。