アブラムシの駆除方法と農薬散布のやり方【家庭菜園初心者向け】

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今回は、アブラムシの駆除方法と農薬散布のやり方について紹介します。

  • イチゴを育てていて、アブラムシが発生して困っている
  • アブラムシに有効な対策を知りたい
  • 農薬散布はどうやって行うの?

このような疑問や要望がある方は、ぜひ最後までお読みください。

目次

アブラムシの発生状況の確認

まず、現在のアブラムシの発生状況を確認しましょう。

アブラムシがよくいる葉っぱの裏側などを見ることで、どのくらいアブラムシが発生しているのかを簡単に確認することができます。

下の写真のような状態であれば、かなりアブラムシによる被害が進行している状態です。

アブラムシの対策

アブラムシの対策にはいくつかの方法があります。

具体的には以下の通りです。

①農薬散布

1つは農薬を散布する方法です。

散布する農薬にもいろいろな種類があります。

例えば、アブラムシの口を塞いで窒息死させる農薬や、アブラムシに接触させて直接殺す農薬、土に混ぜ込む農薬、自然農薬など用途に応じて様々な種類の農薬があります。

➁防虫ネット

窓や仕切りがない部分があるビニールハウスの場合、ハウス内と外が完全に遮断されていないため、外からどんどんアブラムシが入ってくることがあります。

そこで、仕切りがない部分について、目の細かい防虫ネットを張ることでアブラムシが外から侵入するのを防ぐという方法もあります。

③粘着シート

これは、ベトベトする粘着質のものが吹き付けられた黄色いシートを、ハウス内に設置しアブラムシを捕獲するためのものです。

但し、この粘着シートは、アブラムシを駆除するというよりも、ハウス内などにどのぐらいアブラムシが発生しているのかを調べるといった使い方をすることが多いです。

④天敵益虫

ここでいう「天敵」というのは、アブラムシにとっての天敵のことを指します。

例えば、アブラムシを食べてくれる虫であったり、アブラムシの成虫に寄生する虫などがいます。

そのような虫を利用することで、アブラムシの発生を抑えることができます。

いろいろな農薬の紹介

ハウス内に大量のアブラムシが発生した場合、農薬を散布して駆除するのが一般的な方法です。

但し、上述したように農薬といってもいろいろな種類がるため、どれを選べばいいのか迷うかもしません。

ここでは、ホームセンターで簡単に購入できる農薬について特徴を紹介していきます。

①やさお酢

まず初めに紹介するのが、やさお酢という農薬です。

多くのホームセンターで取り扱われている商品です。

これは酢を薄めたもので、植物に直接スプレーすることで、病害虫の予防に効果があると言われています。

ただそのままスプレーするだけなので、散布方法はとても簡単です。

➁アーリーセーフ

次に紹介するのは、アーリーセーフという商品です。

成分は脂肪酸グリセリド乳剤です。

この農薬は全ての野菜やハーブ、花などに使用でき、有機栽培にも使用可能です。

アブラムシやハダニ、その他病気にも効果があります。

また、収穫前日まで何度でも使用可能です。

このタイプの農薬を使用する際は、商品のボトルに記載がある適応作物と適応病害虫を確認してください。

それから、商品の使用方法や注意点についても必ず確認するようにしましょう。

類似商品としては、マラソン乳剤やベニカベジフル乳剤などもあります。

但し、これらは化学的な殺虫成分を使ってアブラムシを駆除するタイプの農薬のため、有機栽培には使用できないので注意してください。

③粘着くん

粘着くんは、その名前からも想像できる通り、ネバネバした液体を虫に散布することで、それが乾く時に虫の口を塞いで呼吸できなくさせて殺す農薬です。

主な成分はデンプンとなっています。

野菜類に使用が可能で、アブラムシ、ハダニ、コナジラミ、うどん粉病などに効果があります。

希釈倍率は100倍です。

この粘着くんは、家庭菜園用としてはあまり販売されていませんが、商業的な農園ではよく使用されている農薬になります。

展着剤について

先ほど紹介したような農薬を使用する場合、展着剤を使用することをおすすめします。

展着剤は、使用する薬剤を水に溶けやすくしたり、葉に広がりやすくしたりするためのものです。

なぜ展着剤が必要かというと、植物の葉には、種類によって水滴を弾く特徴があるためです。

そのような特徴をもった植物に対して、ただ水に溶かしただけの農薬を散布してしまうと、葉に薬剤を弾かれてその効果が落ちてしまいます。

そこでこの展着剤を使用すると、薬液が弾かれずに葉に広がり、農薬の持っている本来の効果を発揮することができます。

ホームセンターなどに行くと、家庭菜園用の展着剤なども販売されています。

但し、中にはこの展着剤を使用しなくてもいい農薬や、使用しない方がいい農薬もあります。

それについては、使用する農薬の注意書きのところに記載があるので、そこをよく確認して展着剤を使用するかどうかを判断してください。

農薬散布の際の注意点

ここでは、農薬を散布する際の注意点について説明します。

まずは使用する農薬の裏面にある注意書きをよく読み、その農薬の使用方法や適応する病害虫、どんな野菜に使えるかなどを必ずチェックしてください。

そこに使用したい野菜の名前が書いてない場合には、使用することはできません。

日本の農薬はポジティブリスト制を採用しており、農薬ごとに登録された作物にしか使えません。

そのため、農薬の注意書きや、その農薬のWebサイトを確認し、その農薬がどの作物に使えるのかをしっかりと確認したうえで散布するようにしましょう。

粘着くんで害虫を駆除できるのであれば化学農薬の必要性は?

農薬の中には、デンプンを主成分とした粘着くんのように、虫の口を塞いで窒息死させるタイプの農薬がいくつかあります。

ではなぜ、このような農薬があるにも関わらず、化学農薬をはじめとした強力な殺虫成分を含む農薬が別にあるのでしょうか?

それには以下のような理由があります。

  1. 化学農薬と比べると効き目が弱い
  2. 口を塞いで窒息死させるという性質上、虫の卵には効果がない
  3. 効果を持続させるために何回も連続散布することが必要

まず、1についてですが、粘着くんのような虫の口を塞いで窒息死させるタイプの農薬は、化学農薬のように殺虫成分が直接虫に触れることで殺してしまうタイプの農薬に比べると効き目が弱いということが挙げられます。

2については、既に卵が産み付けられていた場合、成虫の数は減らすことができても、卵を殺すことができないため、数日後には卵から幼虫が孵って再び害虫の数が増えてしまうということになってしまいます。

3については、効き目が弱いということもあり、何度も連続して散布することが必要になります。

化学農薬のように一回の使用で一気に害虫を駆除するというタイプではないため、例えば今日散布したら、4日後にまた散布し、そのさらに4日後にまた散布するということを繰り返して、少しずつ害虫の個体数を減らしていくという作業が必要になります。

このように、農薬によって使用方法はいろいろあります。

どんな状況でも一つの農薬だけ使用すれば大丈夫というわけではありません。

状況に応じて、どのタイプの農薬が一番適しているかを考えて散布するようにしましょう。

農薬散布する際の装備について

農薬散布をする際は、農薬散布に適した服装や装備を整えてください。

とにかく肌を露出させないことが重要です。

また散布する農薬によって、防備の厳重さを変えてください。

特に強い成分を含む農薬を散布する際は、出来るだけ厳重な防備をしましょう。

主な装備は以下の通りです。

①帽子を被る

まず帽子またはフードなどを被りましょう。

農薬などが直接付着しないように、頭皮が露出しないようにしてください。

➁ゴーグルをつける

農薬散布の際は必ずゴーグルをつけてください。

ゴーグルをすることで、目に直接農薬がかかるのを防ぐことができます。

③農薬散布用のマスクをつける

マスクも必ず着用してください。

マスクについては、花粉症対策用などの普通のマスクは使用できません。

農薬散布用のマスクを準備してください。

農薬散布用のマスクにもいろいろな種類があり、鼻と口にするタイプもあれば、顔や頭全体を覆うタイプもあります。

④長袖の雨合羽を使う

農薬散布は、当然ながら半袖の服装ではできません。

そこで長袖の雨合羽を着ることで、安全に農薬散布を行うことができます。

商業的な農園の場合であれば、農薬散布用の宇宙服のようにしっかりとした防護服を使用しますが、家庭菜園等で使用するのであれば、コストの安い長袖の雨合羽でも大丈夫です。

⑤長ズボンのレインコートを使う

ズボンについても、半ズボンなどではなく、長ズボンのレインコートを使用することをおすすめします。

長ズボンであっても、普通の生地だとそのズボン自体に農薬がしみ込んでしまうので、レインコートがおすすめです。

⑥長靴

普通の靴の場合、農薬がしみ込んでしまいます。

農薬散布の際は、長靴を着用しましょう。

⑦ゴム手袋

普通の軍手や背抜きタイプの手袋は、農薬散布には使用できません。

必ずゴム手袋を用意しましょう。

使用する農薬の選び方

農薬を散布するにあたり、どの農薬を使用するかの選び方について説明します。

選び方としては、以下の手順で農薬を絞り込んでみてください。

  1. 病気の症状や害虫を見つける
  2. 病気や害虫の名前を特定する
  3. その病気や害虫に効果がある農薬を買う
  4. 農薬の注意書きをよく読む
  5. 注意事項を守って農薬を散布する

以上のような流れになります。

発生している害虫や育てている作物など、状況によって使用できる農薬はいろいろ変わってきます。

上記の手順で、みなさんが散布すべき農薬はどの農薬かをしっかりと見極めましょう。

農薬を散布するタイミング

農薬散布に最適なタイミングは、朝早くまたは夕方遅くです。

特に屋外で農薬散布をする際の注意点として、農薬が乾く前に雨が降ってしまうと効果がありません。

そのため、こまめに天気予報をチェックして、雨が降らない日に農薬を散布しましょう。

また、農薬は種類によって効果の出方が様々です。

  1. 散布したらすぐに虫が死ぬ
  2. 散布した翌日に死ぬ
  3. 散布から1週間から2週間かけて死ぬ
  4. 成虫には効果がないが卵や幼虫は死ぬ
  5. 駆除効果は弱いが、予防効果は高い

このように農薬によって効果の出方が違います。

それらの特性も理解したうえで、農薬を散布するタイミングを決める参考にしてください。

農薬散布の前にやっておくべきこと

農薬選びなどの他にも、農薬散布の前にやっておくべきことがあります。

それは、古い葉や脇芽、病害虫の被害にあった部分を摘み取っておくことです。

そうすることで、古い葉や病害虫が発生した箇所を取り除くことで菌や害虫の密度を下げることができるからです。

また、余分な葉や脇芽を取ることで、農薬散布の際に薬液が全体にかかりやすくなるという効果もあります。

薬液の準備~散布作業

使用する農薬が決まったら、薬液を準備していきましょう。

今回は、例として粘着くんを使用して説明していきます。

手順1:農薬散布機を準備する

まず、農薬散布機を準備してください。

農薬散布機には大きく分けて以下のようなタイプがあります。

  1. ハンドスプレー式
  2. 蓄圧式
  3. 背負式(バッテリー式・乾電池式・エンジン式など)

栽培している畑の広さや、栽培している作物の数などに応じて最適なタイプを選んでください。

数株だけであればハンドスプレー式で十分ですし、数十株であれば乾電池式のものなどがおすすめです。

それ以上の大規模な農園などでは、バッテリー式やエンジン式などより大型のものが必要な場合もあります。

今回は、3のタイプの乾電池を使って散布をすることができる2リットルの小型の農薬散布機を使用します。

用意した農薬散布機は、使用前に必ず水洗いしてください。

使用後はもちろんですが、使用前にも念のため必ず水洗いするようにしましょう。

手順2:半分くらいまで水を入れる

今回は2リットルの農薬散布機を使用します。

散布機にあらかじめ半分くらいまで水を入れておきます。

手順3:農薬を測って入れる

今回使用する農薬は粘着くんです。

粘着くんの注意書きには、「使用する前によく振ってから使う」と書かれていますので、まずよく振りましょう。

粘着くんの希釈倍率は100倍です。

今回使用する農薬散布機の容量は2リットルですので、粘着くんの使用量は20㏄ということになります。

軽量カップや注射器、スポイトなどを使用して、使用する分量の農薬を測ります。

20㏄を測ったら、粘着くんを農薬散布機の水に混ぜます。

その後、使用した軽量カップを洗ってその水も農薬散布機に入れます。

ここで一度混ぜてから、規定の倍率になるように水を足していきます。

薬液が完成したら、容器のフタを閉めて容器を振って中の薬液をしっかり混ぜてください。

容器によっては、棒でかき混ぜたり撹拌機を使用する場合もあります。

以上で薬液の準備は完了です。

今回、粘着くんは展着剤を使用しないタイプの農薬のため、展着剤は用意していません。

もし展着剤を使用するタイプの農薬の場合は、農薬を測る前に、展着剤を先に測って水に混ぜておきましょう。

手順4:農薬の散布作業

それでは、完成した薬液を実際に散布していきます。

葉の上からまんべんなく散布します。

次に手で葉を裏返しながら、裏側にもまんべんなく散布します。

イチゴのランナーにもしっかり散布してください。

できるだけ農薬が体に付くのを防ぐため、基本的には後ろに下がりながら散布していきます。

屋外で農薬を散布する場合には、風向きにも注意してください。

風向きを無視すると、自分のほうに薬液が飛んできたり、散布したい野菜ではない作物のほうに薬液がかかってしまったりすることもあるので、特に屋外での作業では風向きを意識しましょう。

手順5:農薬散布機の洗浄

農薬散布が終わったら、必ず農薬散布機の洗浄を行ってください。

まず中に水を入れて、その状態で散布機を回して洗浄します。

当然、洗浄した際の水には農薬が含まれていますので、土に穴を掘ってそこに洗浄後の水を流すようにしてください。

散布機がきれいになるまでこの作業を繰り返します。

少なくとも5回ぐらいは洗浄してください。

繰り返し何度も何度も洗浄することで、散布機の中の農薬を完全に洗い流すことができます。

また、容器だけでなく、ノズルとコードの中も忘れずに洗浄しましょう。

容器に水を入れた状態で、そこにノズルを突っ込みます。

そのまま電源を入れると、コードの中を通ってノズルから水が出ます。

最初はコード内に残っている農薬が出来てますが、数分間続けるとやがて水が出てくるようになります。

きれいな水が出てきたら洗浄が完了です。

最後に容器、ノズル、コードの全てを水洗いし、しっかり乾燥させてください。

手順5:使用した道具や防護服の洗浄

農薬散布機の洗浄が終わったら、その他の使用した道具や防護服なども洗浄しましょう。

ゴム手袋、長靴、雨合羽など全て水道水でしっかり洗い、乾かせてください。

手順6:シャワーを浴びる

農薬を散布した後は、必ず顔や手を洗い、シャワーを浴びましょう。

どんなにフル装備で隙間なく対策をしていたとしても、少しは農薬を浴びている可能性があります。

作業が終わったら必ずシャワーを浴びてください。

また、体調が優れないときは、絶対に農薬散布の作業は行わないでください。

手順7:農薬を散布した記録をつける

特に家庭菜園の場合には忘れがちな作業ですが、農薬を散布したら必ず記録を残しておきましょう。

記録する内容は以下の通りです。

  • 農薬を散布した日付と時間
  • 使用した農薬・量・濃度など
  • 散布した対象の作物

上記の内容を全て記録してください。

これらを記録しておくことで、後から見たときに、いつ農薬を散布したかなどを簡単に確認することができます。

農薬散布後の状態確認

下の写真は農薬散布をした直後のイチゴの状態です。

農薬散布が完了したら、植物体全体に薬液がかかっているかを確認してください。

もし乾いている部分があると、そこで病原菌や害虫が生き残ってしまい、再度繁殖していまう恐れがあります。

葉っぱの裏や新芽の近く、花の近くなど全ての部分がしっかり濡れているかを確認してください。

下の写真は粘着くんを散布した翌日のイチゴの葉の裏の様子です。

このように農薬散布後のアブラムシの状態を確認してみてください。

もちろんある程度のアブラムシは駆除できているのですが、まだ死なずに動いているアブラムシが多くいることがわかります。

粘着くんを一度散布するだけでは、全てのアブラムシを駆除することができませんでした。

さらにしっかり観察をしてみると、アブラムシだけでなく、ナミハダニも発生していることがわかりました。

このナミハダニもまだ生きていたので、こちらも完全に駆除ができていないことがわかります。

このように少しでも生き残ってしまうと、卵を産んでまた何倍、何十倍と個体数が増えます。

今回のように大量のアブラムシやナミハダニが発生してしまった場合には、粘着くんのように効き目がマイルドな農薬ではなく、化学的に直接虫を殺してしまうような強力な殺虫成分を含む農薬のほうが効果があるかもしれません。

アブラムシの駆除方法と農薬散布のやり方のまとめ

今回は、アブラムシの駆除方法と農薬散布のやり方を紹介しました。

粘着くんを散布した翌日に状態を確認してみると、中には駆除できたアブラムシもいましたが、まだ動き回っているアブラムシやナミハダニがいました。

完全に駆除できなかった結果を見てがっかりされた方もいるかもしれませんが、今回の粘着くんのように、有機農法やオーガニック栽培に使用できる農薬の場合、これが限界とも言えます。

このタイプの農薬は、化学農薬と違って使用回数に制限がなく、毎日散布することもできます。

それは言い換えると、効果があまり強くないからです。

100匹虫がいたとして、それを一度に全部駆除することは、このタイプの農薬では不可能です。

効果が弱い分、何度も繰り返し散布をして徐々に数を減らしていくしかありません。

一回の使用で完全に病害虫を駆除したいと考えている方は、より効果の強い殺虫成分を含んだ化学農薬を使用するほうがより効果的です。

農薬にはそれぞれメリットやデメリットがあります。

その状況や栽培している人の考えに合わせて、どんな農薬を使用するのか考えてみてください。

動画でも紹介していますので、ぜひご覧ください。

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