今回はイチゴの根腐れ病についてご紹介します。
イチゴの根腐れ病を簡単に説明すると、イチゴの根っこが腐り植物が枯れてしまう病気です。
根腐れ病と思われる症状が出てしまったイチゴの株
こちらの写真は根腐れ病が現れたイチゴの株です。
このイチゴの株で根腐れ病と思われる症状が出てしまったので、その株を使って根腐れ病について説明します。
一見元気そうなイチゴも根腐れ病の可能性がある
この植物の状態を見て皆さんはどう思うでしょうか?
元気に育っていて根腐れ病が発生しているようには見えないと思います。
ただ、根腐れ病の症状が出始めているのです。
こちらの葉っぱをご覧ください。
この葉っぱは根腐れ病の症状が出ています。
元気な緑色の葉っぱに見えるかもしれませんが、葉っぱの縁の色が薄い黄緑色に変わっているのがわかるでしょうか?
葉っぱの真ん中が濃い緑で、縁だけが黄緑色になっています。
これが根腐病の初期症状です。
この葉っぱはわかりやすいですね。
真ん中の部分は黄緑色ですが外側が茶色く完全に変色しており、3枚の葉っぱの内、2枚は干からびています。
葉柄長といわれる葉っぱとクラウンの間の茎の部分も完全に干からびてしまっています。
古い葉っぱと根腐れ病の葉っぱの違い
根腐れ病の葉っぱを見て「単純に古い葉っぱなのでは?」と思ったり、逆に古い葉っぱを見て「もしかして根腐れ病?」と思ってしまうかもしれません。
それぞれ症状が違うので、その特徴をご紹介します。
イチゴの古い葉っぱの特徴
古い葉っぱは、縁のギリギリのところだけが乾燥し全体的に色が変わります。
例えば、葉っぱの展開が8~10枚目ぐらいですごく古くなると、葉柄長が完全に枯れ上がることがあります。
しかし葉っぱの展開が5~6枚目だったり、比較的新しい葉っぱは干からびたりはしません。
根腐れ病になってしまった葉っぱの特徴
根腐れ症状が出ている株は、葉っぱの縁から葉っぱの内側に向かって乾燥や変色がどんどん浸食していきます。
これが古い葉っぱと根腐れ病の違いです。
イチゴの根腐れ病が起きる原因
根腐れ病の症状が起きる原因をご紹介します。
根腐れ病になると根っこからの水分の供給が減る
根腐れ病の症状が起きる原因は、根っこから葉っぱへの水分の供給が減ってしまうことです。
そのため葉面積を維持できなくなり、どんどん葉っぱの外側から枯れて気口を潰し、葉っぱからの蒸散量を抑えているような状態です。
逆にいうと、葉っぱからの蒸散を維持できる程の水分や養分の供給が行われていないということです。
この葉っぱは外側からの枯れはありませんが、葉っぱの内側に変な斑点が出ています。
こちらの葉っぱは色艶が悪いような印象ですが、パッと見は元気そうですよね。
花が咲いて実がなっており、ランナーも出ています。
かなり見逃しやすい状態です。
こちらの葉っぱも、一見緑色をしているので元気そうに見えます。
多少葉っぱの外側の様子がおかしいのは古い葉っぱだからと考えがちですが、これが根腐れ病の症状です。
根腐れ病ではないかと紹介した株の1週間後
前回、根腐れ病らしい株の紹介をしてから一週間が経ったので紹介します。
枯れてしまったイチゴの株
根腐れ病ではないかと紹介した株は、葉っぱの外側からの枯れがどんどん進行してしまいました。
以前紹介した時は葉っぱは元々枯れ始めていましたが、新しい葉っぱも枯れてきています。
他の葉っぱも外側が完全に枯れており、大きな葉っぱも外側から色の変化が起きてます。
イチゴを初めて育てる方も、この様に変化が顕著に表れると「この株ちょっとおかしいのではないか?」と気がつきそうですよね。
隣の株は新葉の状態はおかしいですが、あまり変化がありません。
新葉が少し長細いというか異常があるにはありますが、葉っぱの枯れは新しく生まれていません。
このまま順調に生育してくればいいですが、枯れてしまうかもしれません。
もしくはわき芽が出てきて復活する可能性もあります。
根腐れ病が発生してしまった原因は
- 元から苗に根腐れ病の菌がいた
- 土に根腐れ病の菌が付いていた
- 水遣りの頻度が多かった
- 排水性が悪かった
- ベランダで育てているため日当たりが悪く加湿状態になった
ということが考えられます。
この株はもう少し観察を続けます。
イチゴの根腐れ病の原因菌の種類
イチゴの根腐れ病についてもう少し詳しく解説します。
イチゴの根腐れ病にはいくつか種類があります。
①根腐れ病(黒色根腐れ病)
1つ目は一般的な根腐れ病で、先ほど説明した葉っぱの縁からどんどん枯れていく根腐れ病です。
一般的な根腐れ病は根っこが黒くなるのが特徴です。
それからクラウンといわれている茎のような部分まで侵食していって、クラウンも腐ります。
この病気は植物の残渣や土やそこから出てくる廃液で、この病気はどんどん広がってしまいます。
②根腐れ萎凋病
もう1つの根腐れ病が根腐れ萎凋病(いちょうびょう)という病気です。
この病気は葉っぱが枯れるのではなくて、萎れたり矮化(わいか)といって葉っぱが小さくなる根腐れ病です。
一般的な根腐れ病は葉っぱの縁からどんどん枯れていって、最終的には株全体が枯れてしまいます。
根腐れ萎凋病というのは、水分が抜けて萎れているような状態になったり、葉っぱが小さくなる現象が起きます。
根腐れ萎凋病も根っこ自体が黒くなったり、茶色くなったりします。
それからこの病気は主に苗で感染していくといわれています。
根腐れ病にならないための対策、予防方法
イチゴの根腐れ病対策はどちらの根腐れ病に対しても共通の対策があるので、それを紹介します。
①健全なイチゴの苗を用意する
まず1つ目は健全な苗を用意することです。
苗が根腐れ病菌に感染してしまっているとどうしようもありません
病気に感染していない元気で生育が良い苗を用意しましょう。
②病原菌がいないきれいな土を使う
次は病原菌がいないきれいな土を使うことです。
家庭菜園の場合には、地面に直接イチゴを植える場合もありますよね。
それから伝統的なイチゴ栽培でも、土耕栽培といって地面に直接苗を植えます。
家庭菜園でイチゴをプランターに植えていたり、商業的な農園で高設栽培をしている場合はある程度培地を選べます。
なので、その時に病原菌の感染がないきれいな培地を使うようにしてください。
地面で栽培する場合、前年度に根腐れ病が出ていたらその場所を使わないようしてください。
使う場合は、太陽熱消毒や薬剤による殺菌をして使うなどの工夫をしてください。
土の太陽熱消毒の簡単なやり方と培地温度の測定結果【土壌消毒で病気や害虫、雑草を駆除と予防】
③排水性を良くする
排水性を良くすることも大事です。
地面でイチゴを栽培している場合は、畝を高くして排水性を良くしてみてください。
プランターや高設ベンチを使っている場合、排水性が良い軽石のようなものを混ぜたり、栽培容器の底に鉢底石を入れるような工夫をしてみてください。
④水やりの頻度や量を調整する
水やりの量や頻度を調整して、水が多くなりすぎないように気を付けて下さい。
晴れていて土が乾いている場合は水をあげた方がいいです。
しかし、雨が続いている時期やプランターや地面が湿った状態の時には水を与えないでください。
根腐れ病は植物残渣や培地、排水を伝って感染が広がります。
商業的に高設栽培や養液栽培などをしていて他のイチゴの株の下を排水が伝わっていたり、全ての排水が1つのユニットで繋がっている場合は病気がどんどん広がってしまいます。
なので、排水性の改善や培養液の殺菌の必要が出てきます。
もしイチゴが根腐れ病になってしまったら?対応方法は?
次にイチゴの根腐れ病の株を見つけた時の対策を紹介します。
例えば、うどん粉病や灰色かび病のような病気は、化学農薬や何かしらの手段で病気をある程度治すことができます。
イチゴのうどんこ病や灰色かび病についてはこちらの動画でご紹介しています。
こちらは農家の人向けの動画です。
しかし、根腐れ病に罹って病気がかなり進行した場合はなかなか治りません。
主芽が死んだ時にある程度進行が止まって、その後わき芽が出てきて回復する可能性もあります。
ただ、クラウンまで病気が進行していたり、ほとんどの根っこが死んでしまった場合は回復するのが難しくなります。
回復してもかなり生育が遅れます。
なのでそういう場合は、根っこごと株を抜き取ってください。
クラウンだけ抜き取っても根っこに病原菌が残ってしまうので、根っこごと抜いて処分してください。
それから根っこの周りの土にも病原菌が広がっています。
なので根っこ付近の土ごとごっそり取るようにしてください。
それから根腐れ病が発病した付近の土は、できればイチゴ栽培には使わないようにしてください。
使う場合には必ず殺菌処理をしたりして、根腐れ病の菌を次に栽培する株に接触しないように注意してください。
いちごの根腐れ病の症状と原因、対策方法まとめ
今回はイチゴの根腐れ病について解説しました。
家庭菜園の方も商業的にイチゴ栽培されている方も、根腐れ病に悩まされているのではないでしょうか?
私が仕事をさせて頂いている農園でも根腐れ病は出ていますし、私が栽培している規模でも根腐れ病の症状が現れました。
今回紹介した対策やその後の対応を参考にして、育てているイチゴが根腐れ病にかからないようにしてくださいね。
また、根腐れ病になってしまった場合には、できるだけ被害が少なく済むようにしましょう。
今回紹介した内容は、こちらの動画でご覧になれます。