今回は、土の太陽熱消毒の簡単な方法を紹介します。
- 家庭菜園で使った土を再利用したい。
- 太陽熱消毒って何のためにやるの?
- 太陽熱消毒のやり方がわからない。
このような疑問や要望がある方は、ぜひ最後までお読みください。
なぜ太陽熱消毒をするのか?
土壌消毒にもいろいろな方法がありますが、その中でも最近特に人気があるのが「太陽熱消毒」です。
ここでは、太陽熱消毒を行う3つの理由について説明します。
理由1:病気対策
プランターや袋、地面などで野菜を育てると、その土の中に病気の菌が増えます。
土をそのままの状態で次の野菜を育てると、その土の中で増えた病気の菌によって、次に植えた野菜も病気にかかりやすくなってしまいます。
そのため、土の病気で植物がうまく育たなかった場合には、特に土壌消毒をする必要があります。
土の病気で問題がなかった場合には、必ずしもやらなければならないという作業ではありません。
但し、その時は問題がなかったとしても、2回目の栽培の時に問題が発生してしまうことも多いです。
商業的な農家の場合には、被害が出る前の予防のために土壌消毒を行うことがほとんどです。
家庭菜園の場合は、そこまで頻繁に行う必要はありませんが、少なくとも土壌関係の病気が発生した後には、土壌消毒を行うようにしてください。
尚、土壌消毒の一種である太陽熱消毒がその効果を発揮するのは、土の病気に対してだけです。
例えば、炭疽病や萎黄病、半身萎凋病、根腐れ病、つる割れ病などの病気に効果があります。
一方で、うどん粉病や灰色かび病などのように、空気中を漂うカビの胞子が原因で起こるタイプの病気に対しては効果がありませんので注意してください。
理由2:害虫対策
植物を栽培していると、土の中に害虫が潜んでいたり、害虫の卵が産み付けられていることがあります。
そのまま状態で植物を植えてしまうと、その植物の種を食べられたり、苗の根や葉を食べられるなどの問題が発生します。
そこで太陽熱消毒をすることで、土の中に潜んでいる害虫やその卵を駆除することができます。
理由3:雑草対策
プランターや袋栽培の場合には、雑草はほとんど問題になりませんが、庭や畑など地面の土を使って育てている場合には、雑草が非常に厄介になります。
雑草がいくら刈り取っても生えてくるのは、土の中に種がたくさん含まれているからです。
そこで太陽熱消毒をすると、土の中に含まれている雑草の種を駆除することができます。
地面で野菜を育てていて、雑草に悩まされている方はぜひ太陽熱消毒を行いましょう。
太陽熱消毒は絶対必要?
前述の通り、太陽熱消毒を行う3つの理由について説明しましたが、太陽熱消毒は絶対にやらなければいけないというものではありません。
面倒くさいと感じる方は、土が原因の病気が発生していなければ、やらなくても構いません。
太陽熱消毒を行わない場合は、一度使った土をそのまま再利用してもいいですし、再生剤を混ぜて使いましょう。
もしくは捨てられる土を購入して、毎回使い捨てるという方法もあります。
捨てられる土の材料になっているのは、ヤシガラと呼ばれているココナッツの外側で、植物からできています。
普通の土だとゴミとして回収してくれない自治体が多いですが、この捨てられる土は使い終わった後に燃えるごみとして捨てることができます。
但し、植物を育てていて明らかに土が原因の病気が発生した場合には、太陽熱消毒を行うことをおすすめします。
特にイチゴなどを栽培していて、炭疽病や萎黄病で悩んでいる方は、この太陽熱消毒を行ったほうがいいです。
病気が出た株を廃棄することも大切ですが、その時の土をそのまま再利用するとまた同じ病気が出ますので、しっかりと太陽熱消毒をしてから再利用しましょう。
このように、太陽熱消毒は絶対にやらなければいけない作業ではありませんが、いずれの場合であっても、この作業を行うことで土の病気のリスクを減らすことができます。
最終的には作業の手間と病気のリスクの両方を天秤にかけて、ご自身で判断するようにしてください。
もちろん、作業の手間が問題でなければ毎回太陽熱消毒を行ってもらっても大丈夫です。
太陽熱消毒を行う時期
太陽熱消毒を行うのに一番いい時期は8月です。
もう少し広くいうと、7月下旬ぐらいから9月上旬ぐらいまでになります。
7月中旬ぐらいまでは、梅雨があるため太陽熱消毒はやりにくいですが、梅雨明けから秋の寒さが始まるまで、これぐらいの季節がやりやすくなります。
また、秋冬野菜を育て終わったゴールデンウィークぐらいの時期にも太陽熱消毒は行えます。
それでもやっぱり太陽熱消毒にベストな時期は8月になります。
8月になると、枝豆やトウモロコシ、ミニトマトやナス、ピーマンなど夏野菜の一部の栽培が終わったり、収穫がひと段落したりします。
そこで8月に太陽熱消毒を終わらせておくと、9月から秋冬野菜を育てやすくなるからです。
ぜひこのタイミングで太陽熱消毒を行うようにしましょう。
理想的なサイクルとしては、下記のような流れになります。
- 秋冬野菜を栽培、収穫。
- ゴールデンウイーク頃に太陽熱消毒を行う。
- 夏野菜を栽培、収穫。
- 8月に太陽熱消毒を行う。
このような一連のサイクルで太陽熱消毒を行うのがおすすめです。
太陽熱消毒の条件
太陽熱消毒を行う際に必要な条件は以下の通りです。
- 土の温度を60℃以上で3週間維持すること。
- 土にある程度の湿り気を持たせておくこと。
1については、途中で60℃以下に下がってしまうことがあっても大丈夫ですが、なるべく高い温度を維持できるようにしてください。
2については、実際に土を握ったときに団子ができるぐらいの湿り気を持たせておくことが重要です。
最近は、年々夏の暑さが酷くなり酷暑が続いています。
これは植物を育てる側にとっては、かなり過酷な環境ではありますが、太陽熱消毒を行うことに関しては、上記の2つの条件を満たしやすくとても良い条件になります。
夏の暑さが暑ければ暑いほど、太陽熱消毒はやりやすくなります。
太陽熱消毒のやり方(プランター栽培の場合)
ここでは、プランター栽培などの場合の使い終わった後の土の太陽熱消毒の具体的なやり方を説明します。
畑などの地面などで行う場合も大体やり方は同じです。
用意するもの
必要なものは以下の通りです。
- 使い終わった後の土
- 穴の空いていない透明の大きなビニール袋
- ジョウロまたはホース
プランター栽培や袋栽培で植物を育てたら、使い終わった後の土を用意してください。
次に、穴の空いていない透明の大きなビニール袋を用意します。
ビニール袋は用意した土が入るくらいの大きさであれば大丈夫です。
重要なのは「透明であること」です。
黒などの色が付いたビニール袋は、光を遮ってしまって中の温度が上がりにくくなるので、好ましくありません。
その他、水を使いますのでジョウロやホースを準備しましょう。
手順1:使い終わった土をビニール袋に入れる
まず、用意した袋に使い終わった土を入れます。
この時に注意したいのが、土から異物を取り除いておくことです。
植物を育てた後の土には、植物の根、葉、茎などが残っている場合があります。
これらの異物には、病気の菌がたくさん含まれている可能性があるため、できる限り異物は全て取り除いて、土中の菌の密度を下げてからビニール袋に入れるようにしてください。
手順2:水をかけて湿り気を持たせる
土をビニール袋に入れた段階では、土は乾燥している状態です。
用意したジョウロなどで水をかけてしっかりと湿り気を持たせてください。
湿り気の目安としては、土を手で握ったときにお団子ができるくらいです。
十分な湿り気を持たせたら、ビニール袋の口を閉じて準備完了です。
手順3:直射日光が当たる場所で放置する
手順2で用意した、口を閉じた状態のビニール袋に入った土は、直射日光がよく当たる場所に置いておきます。
例えば、庭やベランダ、屋上などとにかく日光がよく当たる場所に置くと良いでしょう。
この時、丸い塊にしておくのではなく、できるだけ平にして太陽光が当たる面積を広げるのがポイントです。
温度をできるだけ上げたいので、地面やコンクリートの上に直置きしてしまって大丈夫です。
そのままの状態で3週間ほど放置してください。
この3週間の間に、より多くの晴天が続くと太陽熱消毒の効果が出やすくなります。
もし雨が続くなどして、土の中の温度が60℃以上に上がらない場合はうまく菌が駆除できないかもしれません。
そのため、梅雨の時期は太陽熱消毒を行うのは避けましょう。
梅雨が明けた後の8月は、雨も少なく気温も高いのでより失敗しにくいです。
また、雨が降ったり、曇りや夜などで気温が下がってしまった場合ですが、特に何もする必要はありません。
雨などの水が外から入らないように、ビニール袋の口がしっかり閉じているかどうかは確認しておきましょう。
太陽熱消毒のやり方(畑などの場合)
次に、畑など地面の土を使った場合での太陽熱消毒のやり方を説明します。
用意するものと手順
まず、夏野菜を育て終わった場所に畝を立てて、水をかけてください。
その後に透明なビニールマルチを張ります。
これも白や黒ではなく、透明なビニールマルチを用意してください。
張り方は、普通のマルチの張り方と同じです。
その後、3週間放置すれば太陽熱消毒が完了です。
ビニールハウスで行う場合の注意点
ビニールハウスで太陽熱消毒を行う場合、方法は上記の畑で水をかけてビニールマルチを張るのと全く同じですが、それに加えて「蒸し込み」を行ってください。
この「蒸し込み」とは、ビニールハウスを締め切ってハウスの中の温度をできるだけ高く保つことで太陽熱消毒の効果を上げる作業のことです。
蒸し込みを行うと、ビニールハウスの中の温度がかなり高くなるので、ハウスの中に電子機器などを置いておくと故障する可能性があります。
ビニールハウスの中の物は必ず外に出してから行うようにしましょう。
処理後の土の使い方
太陽熱消毒を行った後、ビニール袋を開けると湿り気が少し多いと思います。
そのままの状態ですぐに使うのではなく、口を開けた状態で数日置いて、少し乾燥させてから使うようにしましょう。
乾燥後、土の状態が良ければ、そのまま培養土として使っても大丈夫です。
土の状態は改善したい場合には、そこに再生材を混ぜて使っても良いでしょう。
例えば、排水性を改善するためには、籾殻燻炭を混ぜたり、赤玉土の大粒を混ぜるなどがおすすめです。
保水性を上げたい場合には、酸度調整済みのピートモスやバーミキュライト、黒土などを使う方法もあります。
土壌消毒をすると、土の中の良い菌も減ります。
そのため、堆肥や菌資材を入れましょう。
実際の作業の様子
それでは、前述の作業の手順を踏まえて、実際の作業の様子を見てみましょう。
太陽熱消毒の準備
まずはデルモンテのめちゃラク!トマト栽培セットを育てた後の土をビニール袋に移していきます。
このシリーズには、トマトの他にもナスやトウガラシもあり、超初心者の方にはおすすめです。
このように、収穫が終わった後のプランター栽培や袋栽培の土を、透明のビニール袋に移します。
この時に、根っこなどの異物をできる限り取り除いておきましょう。
完全に取り切れなくても大丈夫です。
その他のプランターの土もビニール袋に入れていきます。
このタイミングで湿り具合も確認し、湿り気が足りなければ水を足します。
水を足したら、袋の中でよく土を混ぜます。
握っても水が滴り落ちずにお団子ができるぐらいまで湿り気が調整できれば完成です。
袋の口をしっかりと閉じ、直射日光が当たる場所に3週間放置します。
今回は3つの袋やプランターの使い終わった土を混ぜました。
違う土を混ぜたくない場合は、混ぜずに別の袋に分けて作業しても大丈夫です。
土の温度を測定
温度計を使って太陽熱消毒を行う土の実際の土の中の温度のデータを取ります。
下の写真のように、温度計をジップロックの中に入れて土の中に埋め、午前9時から計測を始めました。
この日は晴天で、14時の段階で54℃まで土の温度が上がりました。
このぐらいまで上がれば、土の中にいる虫や菌、雑草の種などを駆除できます。
温度計測の結果、この日一番温度が上がったときで57.4℃でした。
この日の温度の推移は下の写真の通りです。
午前9時に設置して、13時頃には42.7℃、15時頃には57℃まで上がり、19時半頃には42℃まで落ちています。
意外と夕方から夜にかけては、思ったほど温度は下がっていないこともわかりました。
土の太陽熱消毒の簡単な方法のまとめ
今回は、土の太陽熱消毒の簡単な方法を紹介しました。
太陽熱消毒は、家庭菜園でも農家でも使えるとても大切な技術です。
その方法はプランターなどで育てた場合でも、畑などの地面で育てた場合でもその方法はそれほど大きくは違いません。
絶対にやらなければならない作業ではありませんが、土が原因で起こる病気に悩まされている方は太陽熱消毒を行うことをおすすめします。
夏野菜を育て終わった8月が、この太陽熱消毒を行うのにベストなタイミングです。
その後の秋冬野菜を元気に育てるためにも、ぜひ太陽熱消毒を行ってみてください。
動画でも紹介していますので、ぜひご覧ください。