今回は、植物栽培用の活力剤について詳しく解説したいと思います。
家庭菜園を初めてする人の中には、肥料をどういうふうにしたら良いのか悩んでる方もいらっしゃると思います。
ホームセンターやネット通販で肥料を買おうとするといろんな種類がありますよね。
その時に、こちらの活力剤もひとつ選択肢に入るのではないでしょうか。
実際、私が購入したこちらの活力剤の説明文にどのようなことが書いてあるのかを読んでみます。
全植物用活力剤アンプル
植物の生育に必要な栄養素をバランスよく配合
あらゆる植物を元気にする!
あらゆる植物に最適!
失敗がなく安心してご使用頂けます。
◆植物が芽を出すときに。
◆バランスの良い栄養補給に。
◆夏の日照りで弱ったときに。
◆冬の寒さに負けそうなときに。
◆植え替えなどのあとに。
◆葉のつや、色に元気がないときに。
◆土がやせているときに。
このような説明文が書いてあるので、野菜栽培に使えるぞと思って野菜栽培で使用している方も中にはいらっしゃると思います。
ただ私はこちらの活力剤を野菜栽培に使うのはおすすめしません。
その理由を解説します。
活力剤とは何か
活力剤とは何かというと、一般的にこの様な見た目で売られている物です。
小さいアンプルと呼ばれている物に入っていて、中は液体です。
似た物として、このハイポネックスみたいな液体の肥料があります。
それからこのハイポニカもそうですね。
ハイポネックスやハイポニカとの違いは、こちらは肥料です。
活力剤は肥料ではありません。
分かりやすいように表を作りましたのでこちらを見てください。
活力剤、液体肥料、固形肥料の3つにわけて説明させてもらいます。
NPKの表記はN窒素、Pリン酸、Kカリという意味です。
そこに6-10-5とか10-10-10とか数字が3つ並んでいます。
これはNPKの順番で含有率%を示します。
なので6-10-5と書いてあったら、窒素6%、リン酸10%、カリ5%含まれているという意味です。
それに従って見てみると活力剤に関しては、窒素5%、リン酸10%。カリ5%の割合で含まれている物を700倍に薄めたものと書いてありました。
液体肥料のハイポネックスは6:10:5の割合で入っています。
それからこの固形肥料は10:10:10と書いてありました。
プラスでカルシウムも入っています。
窒素リン酸カリ、この3つが重要な肥料分です。
窒素の含有率
今回はこの中でも特に重要な窒素に的を絞って話します。
窒素の含有率を見てみると、活力剤は0.007%、液体肥料は6%、固形肥料は10%です。
このように肥料分がごく少量だと肥料とは見なされていません。
日本には肥料に関する法律もありましてその法律によると、この様に低い濃度の栄養素を含んだものは肥料には該当しません。
植物栽培用の活力剤の種類
それから活力剤には2種類あります。
- わずかに肥料分を含み、微量要素を含むもの
- 肥料分をまったく含まず、微量要素だけ含むもの
「①わずかに肥料分を含み、微量要素を含むもの」にはどういったものがあるかというと、このような活力剤です。
もうひとつの「②肥料分をまったく含まず、微量要素だけ含むもの」はこちらのメネデールなどです。
活力剤、液体肥料、固形肥料の窒素の量を比べる
活力剤、液体肥料、固形肥料のそれぞれの窒素含有率、窒素の含有量、一回の使用量、一回の使用量のときの窒素施用量、固形肥料の何倍必要か?というのを表で表しています。
肥料成分の含有量
窒素の含有率は、0.007%、6%、10%です。
含有率は重量比ですが今回はざっくりと体積で計算しました。
それからひとつのパッケージの量は、活力剤は35ml×10本で350ml、液体肥料は800ml、固形肥料は120gです。
ひとつのパッケージにどれくらい窒素が含まれているかというと、活力剤は0.025g、液体肥料は48g、固形肥料は12gです。
肥料と活力剤の使用量の比較
ただし肥料ごとに一回の使用量が違います。
活力剤はひとつの植木鉢に3本くらい挿してくださいと書いてあります。
液体肥料は500mlの希釈液には1mlほどです。
固形肥料は1gの粒を6粒ほど使うように書いてあります。
一回の使用量を守った場合、一回の使用で窒素をどれだけ与えられるか?というと、活力剤は0.007g、液体肥料は0.06g、固形肥料は0.6gです。
これだけ差が出てきました。
それでは最も多い固形肥料と同じだけの窒素分を与えようとしたら、何倍必要なのか?を見てみると、液体肥料は10倍、活力剤は81倍です。
固形肥料6粒と同じ窒素を液体肥料で与えるには、500mlの希釈液肥を10回与えればいいということになります。
これは一度にたくさん肥料を与えるのか、10回に分けて与えるかの違いとも言えます。
1回で与えられて楽とも言えるし、10回に分けることで効率的な施肥とも言えます。
ただし活力剤に関しては、同じ窒素を与えるためには通常よりも81倍の量が必要になってきます。
1回の使用量が3本でその81倍必要なので、3本×81倍=243本必要になります。
固形肥料6粒と活力剤243本が同じ窒素量を持っているということになります。
このようにこちらの活力剤で窒素を与えようとすると、ものすごくたくさんの量を与えないといけないので効率が悪く現実的ではありません。
植物栽培用の活力剤のECを測定
それでは参考までにこちらの活力剤のECを測定してみます。
ECというのは液に含まれているおよその肥料分を示してくれます。
では測ってみましょう。
こちらは比較のために用意した水道水です。
まずは水道水をECメーターで測定してみます。
230μS/cmという値になっています。
水道水はだいたい200くらいの値になります。
ではこちらの活力剤はどれくらいの値になるかというと、活力剤は350μS/cmです。
ハイポネックスも試しに測ってみましょう。
こちらのハイポネックスを水で薄めました。
測定してみましょう。
野菜栽培用の濃度に薄めました。
ハイポネックスは1,400μS/cmという値になっています。
- 水道水 200μS/cmくらい
- 活力剤 300μS/cmくらい
- ハイポネックス希釈液 1,400μS/cmくらい
という数値になっています。
実際、野菜栽培に使う液肥のECというのは500~2,000μS/cmくらいが適正です。
それから肥料は濃度だけでなく使用量も重要になってきます。
活力剤アンプル瓶の使い方
活力剤を使う場合は先端を切り、土に挿します。
そうすると少しずつ液が出てきます。
1本に35ml入っていて3本くらい使用します。
ただハイポネックスを使う場合は1株当たり100~3,000mlほど使用します。
そちらを週に何回か、もしくは数週間に何回か繰り返し与えていくことになります。
液体肥料と活力剤はEC(濃度)も使用量も違います。
植物栽培用の活力剤の使い道
ただこの活力剤も全く使い道がない訳ではありません。
こちらの表は家庭菜園、観葉植物、農家でどういった使い分けがあるのかを示しています。
家庭菜園の場合
まず家庭菜園では肥料を使いましょう。
その代わり活力剤は使用をおすすめしません。
栽培にこだわりたい家庭菜園上級者は葉面散布や微生物資材を使用も考えてみて下さい。
観葉植物の場合
観葉植物の場合には肥料は使った方が良い場合と、使わない方が良い場合があります。
活力剤の使用はおすすめです。
葉面散布などは使用する必要がありません。
農家の場合
農家の場合は肥料を使います。
活力剤は使いません。
その代わり葉面散布や微量要素、微生物資材などを使います。
ではなぜこれだけ使用するものが違うのか?と言いますと、それぞれ植物を育てる目的が違うからです。
野菜には肥料がおすすめ
例えばここにナスの苗を用意したんですけれども、ナスを育てるときに求めるのは収穫量ですよね。
そのためにはこのナスが大きく育たないといけなません。
葉が大きくなることによって、実も大きくなります。
観葉植物には活力剤がおすすめ
それからここに観葉植物を持ってきました。
この観葉植物を育てるときにどういったことを求めるのかというと、この木をすごく大きくしたいとは考えません。
観葉植物が大きくなってしまうと、部屋に入らなかったり、部屋のレイアウトを崩してしまうからです。
なので観葉植物のサイズはそのままが良いが、葉が枯れたりツヤがないのは避けたいですよね。
観葉植物に求めることは、サイズがそのままで見た目が良いことをです。
それから農家の場合には、家庭菜園と同じように収穫量を追求します。
生産効率を上げるために色んな手段を使います。
多少コストがかかったとしても、それを売って回収すれば問題ないので費用対効果を考えて色んな資材を使います。
このように家庭菜園、観葉植物、農家では栽培の目的が違うので肥料と活力剤の選択が変わります。
活力剤では肥料成分が足りない
例えば活力剤だけで野菜を育てようとした場合、肥料分が足りないので大きくなりません。
葉の色艶は良いかもしれませんが、生育しないか収穫量が少ないです。
逆に強い肥料を観葉植物に大量に与えた場合、観葉植物が大きくなったり、過剰により枯れる可能性もあります。
ただし観葉植物でも肥料を使う場合もあります。
それは観葉植物を大きく育てたいとき、株分けなどで苗を増やしたいときです。
なので簡単にまとめますと、
- 肥料は植物を大きくするために使うので野菜栽培に使う
- 活力剤は見た目を整えるために使うので観葉植物に使う
活力剤は野菜栽培に肥料と併用がおすすめ
ただ活力剤には微量要素が含まれているので、野菜に使っても良い効果があるのでは?と考える方もいると思います。
それはその通りです。
活力剤の中には窒素リン酸カリ以外の成分を含んでいるので、野菜に使えば効果はあると思います。
でも野菜栽培にはいろんな肥料を使いますよね。
窒素リン酸カリだけの肥料なら、微量要素が足りないかもしれません。
ただこのような有機肥料には微量要素が含まれているといわれています。
また化学肥料であっても微量要素入り肥料や、有機肥料入りの化学肥料もあります。
なので微量要素が入った肥料を使えば、わざわざ活力剤を使う必要はないと思います。
活力剤で野菜が育つのか?使い分けと使い方まとめ
今回は活力剤について詳しく説明しました。
活力剤は観葉植物に使うのはおすすめですが、野菜栽培にはあまりおすすめできません。
活力剤で野菜が育つのか?使い分けと使い方については、こちらの動画でも紹介しています。